以前、早期退職と早死にに関する研究を紹介したことがあったが(ここ、ここ)、UDADISIが退職と健康に関する論文から以下の図を紹介している。
論文のタイトルは「The Health Consequences of Retirement」で、著者は海軍兵学校のMichael Insler。以下はその要旨。
This paper examines the impact of retirement on individuals' health. Declines in health commonly compel workers to retire, so the challenge is to disentangle the simultaneous causal effects. The estimation strategy employs an instrumental variables specification. The instrument is based on workers' self-reported probabilities of working past ages 62 and 65, taken from the first period in which they are observed. Results indicate that the retirement effect on health is beneficial and significant. Investigation into behavioral data, such as smoking and exercise, suggests that retirement may affect health through such channels; with additional leisure time, many retirees practice healthier habits.
(拙訳)
本稿では退職が健康に与える影響を調べる。一般に健康の悪化は労働者に退職を余儀無くさせるため、同時に発生する因果関係の効果を解きほぐすことが課題となる。ここでは、操作変数法を推計に用いた。操作変数は62〜65歳以降も働く確率についての労働者の自己申告に基づいている。自己申告はサンプル対象期間の最初の期において取得した。分析の結果は、退職が健康に与える影響は有意にプラスであることを示している。喫煙や運動といった行動データを見てみると、退職が健康に与える影響はそうした経路を通じてであることが示唆される。余暇時間が増えると、多くの退職者は健康な習慣を身に付けるのだ。
UDADISIが紹介した図では退職者の方が概して健康状態が悪いが、これは要旨で課題として挙げている因果関係の問題を強調するために示した図のようである。ただし論文では、この図でも、退職者の健康の経年劣化の程度が就業者より低い、という点を指摘している。