ベンチマーク指数の役割

ジェフリー・フランケルが、表題の件について4つ挙げている

  1. 自分は平均的な投資家に勝ち続けることができないと判断した投資家に、平均的な投資家の運用をトラックするパッシブ運用のポートフォリオを提供する。
  2. あるアセットクラス内で自分は平均的な投資家に勝てる、と主張するポートフォリオマネージャーのアクティブ運用のパフォーマンスを判断する上での客観的な基準を提供する。
  3. 平均リターンが計算できる*1
    • 債券の場合には平均利回りないしスプレッドが計算でき、ソブリン債のインデックスの場合にはそれが平均投資家がリスクオン・リスクオフのいずれの状態にあるかを判断する指標となる。
  4. 平均的な投資家が特定の方向に誤っている(例:リスクを過小評価している)と感じた場合、それを是正した戦略を立てるのに役立つ。

フランケルは、こうした役割を果たすためのベンチマークは、加重平均のウェイトとして(投資可能な市場における)時価総額を用いるべき、と主張する。その上で、ソブリン債のインデックスで時価総額の代わりにGDPをウェイトに用いる最近の傾向(例:PIMCOノルウェーの政府年金ファンド)に対し、以下のような疑義を呈している:

  • そうした動きは、国債時価総額の高い国は過剰な債務を抱えている恐れがあり、従ってデフォルトリスクがある、という論理に基づいている。しかし理論上は、市場が適切に機能していれば、そうした要因は既に高金利という形で織り込まれているはずである。
  • GDPで加重したベンチマークを用いるよりは、債務GDP比率を明示的に要因として取り込んだ方が戦略を考える上で役に立つのではないか? そうすれば、投資対象国が自国通貨で容易に借り入れができるのか(例:基軸通貨国の米国や、国内保有比率の高い日本)、それとも満期や通貨構成面で脆弱なのか(例:ハンガリー)、をきちんと考える余地が生まれる。
  • 投資家はギリシャハンガリーのケースに過剰反応している。中所得国は過去10年間に債務を減らし、債務GDP比率は先進国より低い水準にある(例:ロシアは7%)。従って、それらの国の債券の供給は限られる。そこにGDPウェイトに従って需要が集中すれば、利回りが不自然な水準にまで低下し、新たなクレジットバブルを生む恐れがある。
  • 新興国の多く(例:タイ、マレーシア、インドネシア南アフリカ、ロシア)は、債務を、ドルをはじめとする外貨建てから国内通貨建てにシフトした。従って、ベンチマーク指数がドル建て債券のみ対象にしている場合、需給の極端なアンバランスが生じる。となると、有用なベンチマークであるためには現地通貨建て債券を含まざるを得ないが、その場合は今度は為替リスクが入ってくる。いわば、デフォルトリスクの削減のコストとして為替リスクが生じるわけだ。

*1:フランケルは言及していないが、ボラティリティなどのリスクが計算できるのもベンチマーク指数の役割の一つであろう。