保守派は組合を支持すべし

昨日のエントリでは、クリス・ディロー(Chris Dillow)が、コース的な企業をもたらす四条件のうち福祉給付に拒絶反応を示す資本主義者を皮肉ったことを紹介したが、それに対し、彼が強力な組合についてスルーしたのはなぜか、という趣旨のはてぶコメントを頂いた。昨日のエントリでは端折ってしまったが、その点についてディローは、以前のエントリにリンクする形で別の議論を展開している。それは即ち、保守派ならば組合を支持せよ、というものである。


ディローがそう主張するのは以下の理屈に因っている。

  • 組合は政府に頼らない自立的な組織である。
    • 国同士を比較した場合、組合の組織率と最低賃金には強い負の相関があるというPhilippe Aghionらの研究は、組合が政府の介入の代替となっていることを示している。おそらく最低賃金以外の規制についても同様。
  • 法律による労働者の保護よりも集団交渉による保護の方が効率的である。
    • 法による保護は杓子定規に適用されるのに対し、集団交渉は柔軟性があるため、賃金や環境の改善に途轍も無いコストが掛かる場合には労働者が諦めるという余地が残されている。また、法律の複雑さがもたらす不確実性は、企業にとって組合と良好な関係を築くよりも悪いこととなり得る。
  • 1991年時点の組合の組織率とGDP成長率をプロットした場合、アウトライヤーとなっている韓国を除外すれば、22の先進国について正の相関(0.25)が見られる。組合が成長に良いと言うには脆弱過ぎる結果であるものの、組合が成長の明らかな阻害要因ということは言えないのではないか。
    • ただし、時系列的に見ると成長の早い経済は組合組織率が低下するという傾向が見られるが、それには内生性の問題(創造的破壊を行っている高成長経済では組合が組織化された職場の比率が低下する半面、硬直化した経済では組合が組織化された職場が温存される)がある。