マルクス対コース:ある実証結果

雇用契約の実験を行ったエルンスト・フェール(Ernst Fehr)*1らの研究を、クリス・ディロー(Chris Dillow)が取り上げ、それをEconomist's Viewが紹介している


以下はその概要。

  • 繰り返し雇用契約の実験では、搾取の割合が21%に低下した。
    • 雇用者は、労働者が雇用契約を維持するのを促すために、公平という評判を得ようとした。
  • この研究から、企業がマルクスの描写する企業ではなくコースの描写する企業となる4つの条件を考察することができる:
    1. 公平に関する強い規範の存在
    2. 企業が「良き」雇用者としての評判を欲していること
      • この条件は、労働者を巡る競争が存在する完全雇用に近い状況下で満たされやすくなる
    3. 強力な組合の存在
    4. 労働者が搾取的な契約を拒否することを可能ならしめる福祉給付のような外部オプションの存在


エントリの最後でディローは、資本主義の支持者の多くがこのうちの4番目の条件を拒絶している、という事実を指摘し、彼らは効率的なコース的企業よりは、資本側が労働者を搾取する力を持つことに興味があるようだ、と皮肉っている。

*1:この人についてはこのエントリ参照。