少し前にここやここで取り上げたサージェントの12の教訓をもじって、クリス・ディローがより非主流派経済学的な立場からの12の教訓を挙げていた。
- 人々は異なる動機を持っている:富、権力、自尊心、仕事の満足感、等々。ある一連の動機に適合するインセンティブ構造は、別の動機についてはうまく機能しないかもしれない。
- 多くのことは真だが、有意性はそれほど高くない。
- 力は重要:通常の経済学はそのことを過小評価している。
- 運は重要:ミンサー方程式*1の決定係数は概して低い。
- 国家においては綻びが数多くあり、組織においても然り。
- 個人の合理性がアダム・スミスの見えざる手のように社会的に最適な結果をもたらすこともあれば、そうでないこともある。
- 価値観同士のトレードオフは政治家がそう思わせているよりも一般的だが、普遍的というわけではない。
- 認知バイアスは至る所にある。
- 経済学で言う限界の話は重要だが、影響はあまり大きくないかもしれない。
- 社会科学においてはメカニズムがすべて。問題は:どのメカニズムがいつどこで働くのか? 即ち、社会科学での普遍的な法則はあったとしても極めて少ない:状況が重要。
- 正確な経済予測は不可能。しかし、時間とともに変動するリスクプレミアムは我々に少しばかりの予測可能性をもたらしてくれる。
- リスクは様々な形でやってくる。ある形のリスクを減らすことは、別のリスクへのエクスポージャーを増やすことを意味することが多い。
コメント欄でディローは、項目7に関連して実際には存在しないかもしれないトレードオフの例として性差別と経済成長を、項目9の「影響力の小さい限界的な話」の例として最低賃金――労働需要を抑制するが、それほど顕著にではない――を、項目11の「時間とともに変動するリスクプレミアム」の例としてハロウィーン効果やメーデー効果(株価が5月に高過ぎ、秋に低過ぎる)を挙げている。
*1:収入が教育と経験の関数として決まる方程式。cf. ディローの以前の記事、Wikipedia。