二つの格差

Econospeakでピーター・ドーマンが、格差には以下の2種類あることに注意を促している

  1. 賃金格差
    • 過去数十年間議論の的になってきた
    • 米国では多くの給与は停滞してきたが、金融のような一部の職種は莫大な報酬を提供してきた
    • 同一職種内でも、僅かなスーパースターが大金を稼ぐ一方、その他の人々はそれを指を咥えて見ているだけの状況に置かれている
    • 原因については様々な議論:人的資本の問題? 勝者総取りの仕組みが悪い? 組合の衰退のせい? 規制緩和や政治の代表性の喪失が関係?
  2. 労働ではなく資本への所得配分が増えている
    • これが最近話題のピケティ本のテーマ

この2つの格差にはあまり重なるところが無い、とドーマンは指摘する。前者は労働所得の配分の問題であり、後者は労働所得の比率そのものが低下しているという問題である。前者は99%対1%の問題であり、後者は1%の1%(=上位0.0001)対それ以外の人々の問題である。

最低賃金の引き上げ、大学教育の無料化、組合の強制加入といった前者の格差の解決策は後者にあまり影響せず、ピケティが正しければ、そうした施策を行っても資本の支配は強固になる一方だ、とドーマンは言う。ピケティ自身もそのことを理解しており、だからこそ世界的な富裕税という途方も無い策を提唱しているのだ、というのがドーマンの解釈である。


コメント欄では、ピケティは著書の中で二つの格差をきちんと区別して扱っており、それぞれの格差を分析するとともに両者の相関も見ている、という指摘がなされている。ドーマンはそれを認めた上で、それでもやはりピケティの主たる貢献は極端な富の集中の話であり、その一方で世間における格差に関する議論はそれとは違う話をしている、とエントリの内容を繰り返している。