アラン・メルツァーがWSJ論説で以下のグラフを提示し、上位1%の所得シェアが増加しているのは米国だけではなく世界的な現象だ、と論じた。
それに対しダロン・アセモグルとジェームズ・ロビンソンが、新著の宣伝用に解説開設*1したブログで、改めてhttp://g-mond.parisschoolofeconomics.eu/topincomes/からデータを引っ張ってきて図を再描画し、いや、欧州のいくつかの国では増えていないだろう、と反論している(Economist's View経由)。
アセモグル=ロビンソンは、併せて以下の図も描画し、このように40年間も所得の中位値が停滞した国は欧州には存在しない、とも指摘している。
さらにアセモグル=ロビンソンは、技術を持った労働者への需要の増加が所得上位者のシェア増大につながった、というメルツァーの主張に対し、因果関係が不明確、と批判した。
この一件をクルーグマンが取り上げ、スウェーデンと米国を比較した図を描画し、確かにスウェーデンでも上位1%の所得シェアは微増したものの、米国と同列に論じるのは無理がある、と述べている*2。
クルーグマンはまた、教育のプレミアム増大は、高等教育を受けたもののごく一部の人の所得シェアが拡大したことを説明できない、としてアセモグル=ロビンソンのメルツァー批判に賛意を表している*3。
一方、ブルース・バートレットは、仮にメルツァーの言う通り税金が高い国でも安い国でも富裕層の所得シェアが増加するならば、税金の多寡は富裕層のインセンティブに余り影響しないことになるのではないか、と指摘した(Economist's View経由)。メルツァー自身は、世界的な現象なのだから所得の再分配政策はあまり意味が無い、と主張していたのだが、意図せずして逆の主張に支持を与える論拠を提供してしまった、というわけだ。