下記のダロン・アセモグルとジェームズ・ロビンソンの新著の内容が、MITニュースで紹介されている。
Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty
- 作者: Daron Acemoglu,James Robinson
- 出版社/メーカー: Currency
- 発売日: 2012/03/20
- メディア: ハードカバー
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以下は同記事の概要。
- 米国のように繁栄する国家がある一方で、貧困に留まる国家もある。また、古代ローマやソ連のように強国なのに崩壊する国家もある。アダム・スミスやマックス・ウェーバーから今日の学者に至るまで、多くの学者がこの問題に取り組んできた。
- アセモグルとロビンソンが出した回答は政治体制。包括的な(inclusive)政治体制、即ち、政治や財産の権利があまねく行き渡り、法の執行と公共インフラの提供がなされる体制を持つ国が、長期的に見て最大の経済成長を達成する。逆に、少数支配的な(extractive)政治体制は、全般的な成長の達成にそもそも失敗するか、もしくは短期の高い経済成長の後に停滞する。
- 経済成長は広範な技術革新に依存するが、そうした技術革新は国が権利を保障し、人々に発明のインセンティブを与える国家でのみ継続する。「経済的繁栄の維持には政治的平等が不可欠」というのがアセモグルの言。
- アセモグルとロビンソンは、このテーマについて約15年の共同研究を続けてきた成果を今回上梓した本にまとめたが、そこでは包括的な政治体制を欠いた国の崩壊や停滞をかつてないほど詳細に研究している。それによると、成長をもたらす新しい技術は国の政治経済の権益バランスを変化させるが、エリートは既得権益を守るためにそれに抵抗する、との由。そうした抵抗によってエリートは一時的に自分の権益を保持するが、結果として国は貧しくなる。
- ウェーバーをはじめとして、文化に成長要因を求める考え方もあるが、アセモグルとロビンソンは以下の理由でそれは説明要因として不十分と考えている:
- また、ジャレッド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」で天然資源の違いを経済発展の違いをもたらす要因として挙げたが、天然資源という条件ではほぼ同様だったにも関わらず、スペインはペルーの6倍の一人当たりの裕福度を達成した。「『銃・病原菌・鉄』には刺激を受けたが、我々の結論はまったく違う」とアセモグルは言う。
- アセモグルとロビンソンによれば、世界の経済史でターニング・ポイントとなったのは17世紀後半の名誉革命。それ以前にも発明家は存在したが、十分な報酬を得ることができなかった。名誉革命は、特許権の保護を含む権利の拡大の歴史において転機となり、18世紀後半以降、英国は新石器時代以来の長期の持続的な経済成長を達成した。
- ジンバブエのような例はまた、独裁者は単に成長政策を分かっていない、という学界の大多数を占める考えへの反証になっている、とアセモグルは言う。そうではなく、独裁者はそもそも目的を権力の維持や自らの腹を肥やすことに置いているため、国の経済発展を最大化しない政策を意図的に選択している。