バーナンキは金本位制の問題点を分かっていない

とDavid Glasnerがバーナンキのジョージ・ワシントン大学での講義スライド噛み付いている


Glasnerが問題にしたのは同スライドの22ページと23ページの以下の文言。

  • The gold standard sets the money supply and price level generally with limited central bank intervention.
  • The strength of the gold standard is its greatest weakness too: Because the money supply is determined by the supply of gold, it cannot be adjusted in response to changing economic conditions.


ここでバーナンキはマネーサプライが金の供給によって決まってしまう、と述べているが、Glasnerは、金本位制においても中央銀行はドルを増刷できるので("Yes more dollars can be created out of thin air under a gold standard!")、マネーサプライは人々の欲する貨幣の量によって決まる、と反論している。人々が支出ではなく溜め込むためにドルを欲していて、それを金に換えようとしないのであれば、中央銀行は幾らでもその欲求に応えることができ、貨幣の保有欲求が景気後退につながる必然性は存在しない、と彼は言う。


その上でGlasnerは、金本位制で問題が起きるのは、人々の貨幣への欲求に加えて金への欲求が生じた時である、と指摘する。その場合、金の供給は急激な変化に対応できないので、必然的に金の価値は上昇し、金で測った他の物品の価値が下落する。即ち、デフレが発生し、景気後退につながる。


では、貨幣への欲求が金への欲求に転化するのは何が原因だろうか? 金本位制では、法定支払準備として銀行が「裏付け」となる金を持つ必要があるため、と多くの人は考えるだろうが、Glasnerに言わせればそれは誤りである。金本位制はあくまでも貨幣単位の価値を金の一定重量として定めるものであり、支払い準備率が0%から100%の間の如何なる値を取ろうが金本位制とは矛盾しない、と彼は指摘する。すると別の可能性は、人々が貨幣にあまり信を置かなくなり、不確実性に備えて金を手元に置いておきたくなったため、ということになる。そして大恐慌においては、主に1928-29年のフランス銀行の常軌を逸した金融政策により、貨幣への需要が増す前に金への需要が増大したのだ、とGlasnerは言う。


なお、このエントリのコメント欄ではBill Woolseyが姿を見せ、「Great explanation」と激賞している。