Mostly EconomicsのAmol Agrawalが、首都大学東京の村田啓子教授とオックスフォードのJohn Muellbauer教授との共著voxeu記事に驚いている。
具体的には、これまでの各種研究では現在の米国の状況と1990年代の日本の状況との類似性を当然視していたのに対し、同記事ではそのことに疑義を呈したので驚いた、とのことである。
記事では、日本と米国(や英国)との主な違いとして以下の2点を挙げている。
- 日本では米英で見られたような家計の信用供与基準の自由化は見られなかった。
- そのため、米英のような借り入れの上昇は無かった。日本の家計の資産対所得比率は世界でも高い方であり、なかんずく銀行預金が多い。異時点間の消費の理論からは、資産対所得比率が高く消費の変動を忌避する家計においては実質金利の上昇は消費にプラスに働く、という結果が導かれるが、日本の家計は実際そうだった。
- そのため、米英のような借り入れの上昇は無かった。日本の家計の資産対所得比率は世界でも高い方であり、なかんずく銀行預金が多い。異時点間の消費の理論からは、資産対所得比率が高く消費の変動を忌避する家計においては実質金利の上昇は消費にプラスに働く、という結果が導かれるが、日本の家計は実際そうだった。
- 住宅価格の上昇は米英では個人消費にプラスに働くが、日本ではマイナスに働く。
以上から、日本での金利引き下げの効果は米英より弱く*1、日本での経験を米英に当てはめるのは誤り、と記事は主張している。2002-05年の金融政策のミスは、そうした日本の経験を当てはめてしまったためではないか、とまで記事では述べている*2。
さらに記事では、債務のGDP比率が経済や所得の成長を抑えるリカーディアン効果も日本の方が米国より強い、という事象も報告している。