米軍と自由市場経済の共通点

24日25日は、InterfluidityにおけるIndyという人のコメントを紹介したが、そのコメントをNicholas Gruenという別のコメンターが自ブログにコピペした。そのエントリにIndyが改めてコメントし、米軍が、政府組織であるにも関わらず、自由市場経済における優良企業と同様にうまく機能している理由を5つ挙げている。自分が属していた組織をやや理想化し過ぎの感もあり、それこそ元のコメントで批判していた専門家による甘い見方が入り込んでいるような気もするが、軍産複合体という一般的な見方とはまた違った切り口という点では興味深いので、以下に紹介してみる。

  1. 頻繁な実地検証
    • 多くの政府機関は評価を免れた状態にあるが、市場では利益という誤魔化しの効かない評価が存在する。軍隊においては、人が命を落とす戦争という現実がその役割を果たす。
    • 幸か不幸か、前世紀に米軍はしばしば実地に駆り出され、否応無しに失敗を味わうこともあったので、自己満足に陥ることが避けられた。
       
  2. 競争
    • 軍隊は究極の独占企業と思われているが、我々を殺害して打ち負かすことに全力を尽くす敵という存在がいる。
    • 軍隊の組織同士での競争もある。例えば海兵隊は独自の戦術、組織、装備を保有している。さらに、そうした競争を煽る文化もある。*1
       
  3. イノベーションへのインセンティブ
    • 軍拡競争。
    • 正規軍対ゲリラという非対称性は、むしろイノベーションにプラスに働く。対称的な敵との争いでは、どこかの国が開発したものにただ乗りしようというインセンティブが働くので。
       
  4. 評価への即応性
    • 戦術的行動では結果がすぐに出るので、何がうまくいって何がうまくいかなかったか、強みと弱み、時代遅れになったもの、設計からやり直す必要のあるもの、等々、が直ちに明らかとなる。格付けやマクロ経済分析ではそうは行かない。
       
  5. 救済は存在しない
    • 「大き過ぎて潰せない」問題は存在しないので、モラルハザードが生じることは無い。というのは、米軍を救済できる同盟国など存在しないからだ。


これに対しては、米軍はふんだんな予算を与えられているという側面を見落としている、という醒めたコメントが付いた。それによれば、ソ連軍も予算がふんだんにあった時代は西側を脅かすほどだったが、予算が無くなってからはさほどではなくなった。一方、中国軍はかつては大したことは無かったが、予算がふんだんに付くようになってから急速に強力になった。いずれもインセンティブ構造は変化していないはず(ロシアも今はチェチェンという敵を抱えているし)、との由。

*1:これは一歩間違うと「陸海相争い、余力をもって米英に対す」という状況に陥る危険性を孕んでいるように思われるが…。