「米国GDPの7割は消費」論の怪しさ

アンドリュー・ゲルマンが、過去10年間の連邦政府の常勤雇用の増分のうち9割は国土安保省だった、と書いたマイケル・マンデル*1批判し、コメント欄でマンデル本人から返り討ちに遭っている。


ゲルマンは、雇用変化にはプラスもマイナスもあるのだから、それを通算した数字に占める割合を論じても意味が無いだろう、と批判したのだが、それに対しマンデルは、対象となる雇用増分の主要内訳はいずれもプラスが僅かなマイナスなので、この場合はそうした割合を論じることが意味を持つ、と反論している


加えてマンデルは、ゲルマンの指摘するような問題は自分は熟知しており、まさにそれだからこそ、かねてより米国GDPの7割は消費という議論を攻撃してきたのだ、と書いている。というのは、GDPには輸入という大きなマイナス項目があるからである。ゲルマンがこの問題を取り上げるならば、より一般に浸透しているそちらの誤解を批判対象とするべきだった、とマンデルは指摘している。
これにはゲルマンも一本取られたと思ったらしく、「Mike: Good point!」と返すのが精一杯だったようである。


調べてみると、マンデルは確かに2年前のビジネスウィーク記事でその問題を取り上げている。その記事でマンデルは、個人消費を項目別に分け、輸入商品の消費は5掛けにするなどの積み上げ計算により、消費は実際にはGDPの4割を占めるに過ぎない、と結論付けている。さらに昨年のブログ記事では、消費のGDPの寄与度は46%という数字を弾き出した労働統計局のエコノミストたちの研究を紹介している。
以前、小生も、輸出のGDPへの寄与度を評価するのには注意を要する、と論じたことがあったが、上記のマンデルの分析は、そうした議論を消費について当てはめたものと言える。

*1:Wikipediaによると、元ビジネスウィークの主任エコノミストで、現在は自分で立ち上げたVisible Economy LLCという会社を率いている(こちらの邦文ブログ記事も参照)。その会社のサイトがこちら。邦訳された著書には下記がある。

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