ブッシュ減税廃止は中小企業を傷つけるか?

マンキューが9/3エントリでKevin HassettとAlan Viardという2人のAEIの研究者がWSJに書いた記事を取り上げている。記事の概要は以下の通り*1

  • オバマ政権は、所得が20万ドル以下の単身者、および25万ドル以下のカップルを除き、ブッシュ減税のほとんどを失効させようとしている。
  • 最近、バイデン副大統領は、減税廃止が中小企業を傷つけるとしたジョン・ベイナー共和党下院院内総務の発言を批判し、減税で影響を受ける中小企業は全体の3%に過ぎない、と述べた。ペロシ下院議長も同様のことを述べた。
  • しかし、3%の分母となる件数は内国歳入庁に報告された納税申告すべてであり、インターネットのオークションで小銭を稼いだ人も含まれる。
  • 個人事業主、共同経営企業、およびS法人を分母に取った場合は、2007年に20万ドル以上の家計所得を得た比率は48%に上る。
  • Robert Carroll, Douglas Holtz-Eakin, Harvey Rosen, Mark Riderの1998年2000年のNBER論文によると、個人事業主の企業活動は税率の影響を大きく受けると言う。彼らの推計では、オバマ政権が計画しているように35%から40.8%に上げた場合、対象となる個人事業主の総所得は7%以上落ち込む。
  • R. Glenn HubbardとWilliam M. Gentryの2000年のAER論文も、累進的な税体系が起業を妨げると報告している。


一方、Capital Gains and GamesのブロガーEdmund L. Andrewsは同じ記事を取り上げて、以下のように反論している

  • 中小企業が大企業より経済にとって良いとは限らない*2。有体に言ってしまうと、一般に中小企業の方が大企業より従業員の待遇が悪い。
  • 中小企業の所得は範囲が広く、個人事業やスタートアップからの収入とは限らない。医者などの高所得の専門家の収入や、富裕層が各種投資事業に投資した収益も内訳に含まれる。
  • 中小企業主の圧倒的多数の収入は慎ましいものである半面、ごく少数が大金を稼いでいる。増税財政問題をすべて解決することはできないという保守派の言い分は尤もだが、裕福な人々の税金を少し上げるのは妥当な線では無かろうか。

*1:マンキューはこの箇条書きの第2項から第4項に相当する部分をブログで引用している。

*2:cf. この記事