世代会計で有名な経済学者ローレンス・コトリコフが、少し前に下記の本を出版した。
Jimmy Stewart Is Dead: Ending the World's Ongoing Financial Plague with Limited Purpose Banking
- 作者: Laurence J. Kotlikoff
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2010/03/08
- メディア: ハードカバー
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自分のHPでもかなりの宣伝を行っているほか、amazon.comでは独占Q&Aと銘打って質疑形式で本の内容を説明している(同サイトにはインタビュー動画もある)*1。
同書でコトリコフが熱心に提唱しているのは、銀行や保険会社やヘッジファンドなどを「Limited Purpose Banking(LPB)」に転換することである*2。このLPBとは、いわばミューチュアルファンドであり、現在の金融機関のように負債でレバレッジを掛けることがない。要はナローバンクのことか、と思うが、コトリコフはLPBをナローバンクよりは広義のものとして定義しており、単に一部の銀行をナローバンク化する(もしくは新設する)のではなく、金融システム全体をナローバンク化して、今回の金融危機のような事態を再発させないようにする、ということを提言している。
ブロゴスフィアでは、先月半ばにデビッド・ベックワースとタイラー・コーエンが相次いでこの本を取り上げた*3。両者の感想は対照的で、ベックワースが(当初は懐疑的だったと言うが)比較的好意的に受け止めている反面、コーエンは懐疑的な姿勢を取り続けている。後者のコーエンの批判に対してコトリコフは、ジョン・グッドマン*4というエコノミストのブログを借りて反論している(ここ、ここ)。
なお、クルーグマンは、以前、こうしたナローバンキング論に対し批判的な姿勢を示したことがある。今回のコトリコフの動きについては特に反応していないが、その時の主張から考えると、おそらくコーエンと同様、その実現可能性に懐疑的であると思われる。