コトリコフの銀行改革案

世代会計で有名な経済学者ローレンス・コトリコフが、少し前に下記の本を出版した。

Jimmy Stewart Is Dead: Ending the World's Ongoing Financial Plague with Limited Purpose Banking

Jimmy Stewart Is Dead: Ending the World's Ongoing Financial Plague with Limited Purpose Banking

自分のHPでもかなりの宣伝を行っているほか、amazon.comでは独占Q&Aと銘打って質疑形式で本の内容を説明している(同サイトにはインタビュー動画もある)*1


同書でコトリコフが熱心に提唱しているのは、銀行や保険会社やヘッジファンドなどを「Limited Purpose Banking(LPB)」に転換することである*2。このLPBとは、いわばミューチュアルファンドであり、現在の金融機関のように負債でレバレッジを掛けることがない。要はナローバンクのことか、と思うが、コトリコフはLPBをナローバンクよりは広義のものとして定義しており、単に一部の銀行をナローバンク化する(もしくは新設する)のではなく、金融システム全体をナローバンク化して、今回の金融危機のような事態を再発させないようにする、ということを提言している。


ブロゴスフィアでは、先月半ばにデビッド・ベックワースとタイラー・コーエンが相次いでこの本を取り上げた*3。両者の感想は対照的で、ベックワースが(当初は懐疑的だったと言うが)比較的好意的に受け止めている反面、コーエンは懐疑的な姿勢取り続けている。後者のコーエンの批判に対してコトリコフは、ジョン・グッドマン*4というエコノミストのブログを借りて反論している(ここここ)。


なお、クルーグマンは、以前、こうしたナローバンキング論に対し批判的な姿勢を示したことがある。今回のコトリコフの動きについては特に反応していないが、その時の主張から考えると、おそらくコーエンと同様、その実現可能性に懐疑的であると思われる。

*1:本のタイトルの意味については、ここで紹介した「良い銀行」の項を参照。

*2:この主張については以前ここで簡単に触れた。

*3:著者献本を受けたのかもしれない。

*4:もちろんこの人では無い。