昨日紹介したサンタフェ・リポーター紙のサミュエル・ボールズに関する記事から、今度はEconomist's Viewが抜粋した部分を以下に訳してみる。
不平等は米国がナンバー1であるための対価に過ぎないのでは?
「それはほぼ確実に間違いです」とボールズはSFRに語る。「20年以上前は、大抵の経済学者は、不平等は進歩という車輪の潤滑油に過ぎないと考えていました。しかし今は、この件の実証研究を行なう人の間では、車輪に挟まった砂利と見なす考えが圧倒的多数派です。」・・・ボールズはその核心的理由を次のように述べる。「不平等は軋轢を生み、軋轢は資源の無駄使いを生むのです。」
つまり、非常に不平等な社会では、社会の上層にいる人々は、下層の人々を従わせ生産に従事させるために、多大な時間とエネルギーを使わねばならないのだ。
不平等は、ボールズが「守衛仕事」と呼ぶものを過剰に生み出す。そのことに関する2007年の論文で、彼と共著者の Arjun Jayadevマサチューセッツ大学助教授は、驚くべき主張を行なった。米国人の4人に1人は、同胞に規則を守らせ、私有財産をロビンフッド気取りから守る仕事に就いているというのだ。
<州ベースの守衛仕事と不平等度(ジニ係数)の関係>
守衛仕事の範囲は、「仕事の規律を守らせる」こと――事務職員がインターネットに現を抜かしてさぼらないよう監視する企業のITスパイを想起せよ――から、法の執行にまで及ぶ。・・・社会の不平等度が高いほど、守衛仕事の需要が大きくなることをボールズは発見した。・・・
問題は、過剰な守衛仕事が「不法な不平等」を維持し、経済の足を引っ張っていることだ、とボールズは主張する。守衛仕事に就いている人は皆、その労働時間をより生産的な仕事に割り当てられるはずだ。たとえば自分のビジネスを始めるといったことだ。・・・
リベラル派は、不平等を階層と人種の問題と考えたがるが、それは当たっている、とボールズは言う。しかし、個々人の成功は大きな不確定要素に拠っている。「運が重要な役割を果たすのです」とボールズは言う。
政治家がどんな約束をしようが、そうした予測不可能な要素を除去することはできない。ということは、ボールズに言わせれば、賢明な政策というのは、自分の責任ではない不運に苦しむ人々を政府が助けることだ。・・・「社会保障の考えというのはつまるところ」とボールズは言う、「幸運な人々が少し余計に払うことによって不運な人々を保証することです。」