高市発言の費用便益分析

高市発言に伴う中国からのインバウンドの損失が1.79兆円になるという試算が公表された(【訂正】中国政府の日本への渡航自粛要請で日本の経済損失は1.79兆円、GDPを0.29%押し下げ | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI))。試算したNRIの木内氏によると、

日本経済への影響は、上記の試算値以外に、国内旅行関連のビジネスへの打撃を通じて従業員の雇用や所得にマイナスの影響が生じ得ることから、波及効果も考慮すると悪影響はより大きくなる。
さらに、尖閣問題の際と同様に、中国がレアアースの輸出規制など、日本に対する貿易規制を実施すれば、日本経済に与える打撃はさらに大きくなる。農産物などの中国からの輸入が滞ることで、物価高が助長される可能性もあるだろう。それ以外に、日本企業の中国でのビジネスにも悪影響が生じる可能性も考えられる。

とのことで、日本経済への影響はもっと大きくなる可能性がある。

では、高市発言にはマイナスの効果しか無かったのだろうか?
プラスの効果として一つ考えられるのは、高市発言によって米国が介入した際に日本が支援することが明確になり、中国が介入により慎重になる、という抑止効果である*1

台湾有事が実際に発生し、それが中国にとって成功に終わった場合、日本ないし世界の民主主義国にとって以下のようなマイナスの影響が生じると考えられる。

  • 有事に伴う直接的な人的・物的損失
  • シーレーンを中国に抑えられる
  • 「防波堤」としての台湾が失われることにより、南西諸島および太平洋がより直接的に中国の軍事的脅威に曝されるようになる
  • 高度に発達した民主主義「国」がアジアおよび世界から一つ失われ、専制主義国の覇権が強まる
  • 高度な半導体製造技術を持つ製造部門が民主主義陣営から失われる
    • ただし、これについてはプラスの代替効果が働く可能性もある

こうした影響の総額を見積もるのは難しいが、仮に台湾のGDPTSMC時価総額の合計程度の300兆円程度としよう。その場合、仮に高市発言によって中国の台湾侵攻の可能性が1%ポイント下がったのであれば、3兆円のプラスの効果があったことになる。2%ポイントならば6兆円である。
以上の試算はあくまでも素人のいい加減な目分量であるが、現在の状況に鑑みると、専門家がもっと精密に抑止効果を定量化すべき時期に来ているように思われる。

*1:前々回エントリで書いたように、中国の扇動や一部のネット言論に反し、日本が単独介入する可能性は高市発言の前も後もゼロで変わらないと考えられる。