というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Bond-Stock Comovements」で、著者はJohn Y. Campbell(ハーバード大)、Carolin Pflueger(シカゴ大)、Luis M. Viceira(ハーバード大)。
以下はその要旨。
This paper documents that during the late 20th Century, nominal government bonds and stocks tended to comove positively, whereas during the first quarter of the 21st Century they have tended to comove negatively. A similar sign switch is observable for real government bonds and breakeven inflation rates. Recent macroeconomic events have caused short-lived changes in these comovements, and periods with high risk premia tend to be periods in which bond-stock comovements are large in absolute value. The paper surveys theoretical models of these phenomena.
(拙訳)
本稿は20世紀末に名目国債と株式が正の共変動をする傾向にあった半面、21世紀の最初の四半世紀は負の共変動をする傾向にあったことを明らかにする。同様の符号の転換は実質国債とブレークイーブンインフレ率についても見られる。最近のマクロ経済の出来事はこうした共変動に短期的な変更をもたらし、またリスクプレミアムが高い時期には株債の共変動が絶対値で大きい時期となる傾向がある*1。本稿はこうした事象についての理論モデルを調べる。
以下は共変動の推移を示した論文の図。

以下は共変動を実質要因(パネルA)とインフレ要因(パネルB)に分解した図。

以下は最近の共変動を高頻度で見た図。

この図が因果関係を示しているとは言えないものの、供給の不確実性、インフレ予想の変化、および金融政策が株債の正の共変動に寄与していることが示唆される、と論文では述べている。株債ベータの経済モデルでもそうした要因の重要性が確認されたとの由。例えば1980年代に戻るのか否か? インフレ要因と国債の実質リスク - himaginary’s diaryで紹介したPfluegerの論文(JFE掲載版=Back to the 1980s or not? The drivers of inflation and real risks in Treasury bonds - ScienceDirect)では、1980年代の正の共変動がもたらされるためには幾つかの要因が符合する必要があったことを見い出したという。具体的には、インフレ的な供給ショックについての顕著な不確実性と、そうしたインフレ的なショックに金融政策が強力かつ素早く対応するという予想の組み合わせが無ければ、当時の株債ベータの正のインフレ成分は説明できないとのことである。これは、モデルにおける消費とインフレの共変動と、強力かつ急速な利上げが景気後退をもたらす傾向があることで直観的に捉えられるという。予想インフレの上昇は名目債の実質価値を引き下げるため、インフレ的な供給ショックと強力な金融政策の反応は株債を同時に引き下げて正のベータをもたらし、また時変的なリスクプレミアムはそれを増幅するとの由。
論文ではまた、株債はインフレと実質金利が反景気循環的な時には正の共変動を示し、順景気循環的な時には負の共変動を示すのが普通だが、そうした共変動の大きさを捉えるのは難しい、とも述べている。
*1:結論部では「We provide new evidence that negative bond-stock betas in the early 21st Century have been more negative when detrended consumption or stock prices suggest that risk aversion has been high; and that positive bond-stock betas in the late 20th Century were even more positive when these same indicators showed high risk aversion or low risk bearing capacity.」と述べている。