というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Bond Convenience Yields in the Eurozone Currency Union」で、著者はZhengyang Jiang(ノースウエスタン大)、Hanno N. Lustig(スタンフォード大)、Stijn Van Nieuwerburgh(コロンビア大)、Mindy Z. Xiaolan(テキサス大オースティン校)*1。
以下はその要旨。
In a monetary union, the risk-free rate cannot adjust to country-level fiscal positions, leaving only default spreads and convenience yields to respond. Empirically, we find that convenience yields explain a large share of the variation in Eurozone sovereign bond yields. Eurozone sovereign bonds earn larger convenience yields when their governments run larger surpluses. Since convenience yields generate substantial seigniorage revenue from debt issuance, our estimates imply economically large fiscal costs from low convenience yields for peripheral countries in the Eurozone.
(拙訳)
通貨同盟においては、リスクフリー金利は国レベルの財政ポジションに適応することはできず、従ってデフォルトスプレッドとコンビニエンスイールドだけが反応できる。我々は、ユーロ圏のソブリン債利回りの変動の多くの割合がコンビニエンスイールドで説明されることを実証的に見い出した。ユーロ圏のソブリン債は、政府がより多くの黒字を計上している場合により多くのコンビニエンスイールドを得る。コンビニエンスイールドは債務の発行によって大きなシニョリッジ収入をもたらすため、我々の推計は、ユーロ圏の周縁国にとって低いコンビニエンスイールドによる経済的に大きな財政コストを意味する。
ユーロ圏の国のコンビニエンスイールドのドイツとの差は、同じ満期のソブリン債の利回りの差から、クレジットデフォルトスワップデータから得たクレジットデフォルトスプレッドの差を差し引いたものとして計算したとの由。共通リスクフリー金利の利回り曲線は観測できないので、このように差を分析することには利便性があるという。
以下はそうして計測した各国のコンビニエンスイールドのドイツとの差の図。

昨年以降の混乱を反映してフランスのマイナスが深まっていること、かつて2010年欧州ソブリン危機を引き起こした南欧諸国が最近は健闘していることが目を惹く。
*1:同じ著者たちの論文を米国の債務GDP比率の変動要因は何か? 吠えなかった犬 - himaginary’s diaryと獲得され喪失した法外な特権:財政面の含意 - himaginary’s diaryで紹介したことがある。