というNBER論文が上がっている（ungated版）。原題は「Markups and Markdowns」で、著者はChad Syverson（シカゴ大）。
以下はその要旨。
Interest in market power has recently surged among economists in many fields, well beyond its traditional home in industrial organization. This has focused empirical attention on markups, the ratios of price to marginal cost in product markets, and markdowns, the ratios of inputs’ marginal products to their paid wage in factor markets. In this review, I offer a conceptual overview of both metrics and survey recent research examining them. I pay particular attention to the distinct interests that microeconomists and macroeconomists have had regarding these metrics, as well as topics that have bridged and are bridging these often distinct literatures.
（拙訳）
元来の分野である産業組織論以外の多くの分野の経済学者が、市場支配力への関心を最近高めている。その関心の焦点は、生産市場における価格の限界費用に対する比率であるマークアップと、投入財の限界生産物の要素市場で支払われる価格に対する比率であるマークダウンの実証面にある。本レビューで私は、両指標の概念的な概要を提示し、それらを研究した最近の研究を調査する。私は特に、それらの指標についてミクロ経済学者とマクロ経済学者が持っている別々の関心と、そのように別個のものとなりがちな研究の架け橋となった、および架け橋となりつつあるトピックに焦点を当てる。
架け橋として本文で挙げているのは以下の3つのトピックである。
また、マクロ経済学者の関心として挙げられているのは以下の2つである。
後者への関心には、2つの原因があるという。一つは、生産性の伸びの低下、投資率の遅れ、所得の労働分配率の低下、利益分配率の拡大、といった、重要なマクロ経済変数に数十年に亘って同時に生じてきたトレンドである。もう一つはより直近の現象であるコロナ禍後のインフレの加速で、市場支配力の拡大との関連が説明要因として関心が持たれている、とのことである。
