マークアップ関係のNBER論文をもう一丁。以下は、Guido Menzio(NYU)による表題の論文(原題は「Markups: A Search-Theoretic Perspective」、ungated版へのリンクがある著者のページ)の要旨。
I derive a formula for the equilibrium distribution of markups in the search- theoretic model of imperfect competition of Butters (1977), Varian (1980), and Burdett and Judd (1983). The level of markups and the sign of the relationship between a seller’s markup and its size depends on the extent of search frictions, as well as on other deep parameters. Markups are efficient. Markups are positive even though the varieties produced by sellers are perfect substitutes. Markups are heterogeneous even when all sellers operate the same production technology. Markups depend on size, even though the substitutability between a variety and the others does not depend on how much of that variety is consumed. Interpreting these markups through the lens of the monopolistic competition model of Dixit and Stiglitz (1977) would lead one to recover incorrect and unstable buyers’ preferences. Interpreting these markups through the lens of the Dixit-Stiglitz model would also leads to incorrect policy recommendations. These results are a cautionary note on recent work in macroeconomics.
(拙訳)
私は、Butters(1977*1)、Varian(1980*2)、およびBurdett and Judd(1983*3)の不完全競争のサーチ理論的なモデルにおけるマークアップの均衡分布の式を導出した、マークアップの水準と、売り手のマークアップと売り手の規模との関係の符号は、サーチ摩擦の程度や、他のディープパラメータに依存する。マークアップは効率的である。売り手が生産する製品の種類が完全な代替物であっても、マークアップは正である。全ての売り手が同じ生産技術を運用する場合でも、マークアップは一様ではない。ある製品の種類と別の種類との間の代替性が、どの程度その製品種類が消費されるかには依存しないにもかかわらず、マークアップは規模に依存する。こうしたマークアップをディキシット=スティグリッツ(1977*4)の独占的競争モデルのレンズを通して解釈すると、誤った不安定な買い手の選好を得ることになる。それらのマークアップをディキシット=スティグリッツのモデルのレンズを通して解釈することは、誤った政策推奨にもつながる。以上の結果は、マクロ経済学の最近の研究への注意書きである。
ディキシット=スティグリッツ流の独占的競争の解釈が不適切な例として論文は、著者が以前の共著論文で用いた、各地で小売業者が販売しているハインツのケチャップの36オンスのプラスチック瓶を挙げている。各小売業者は卸売価格に相当のマークアップを上乗せしているが、その上乗せは、異なる店の同商品を不完全な代替物である別の財として買い手が認識しているために可能になったわけではない。買い手が最安値の別の店で買うのことができないことからそれが可能になった、と考えるの自然である。そこでサーチ理論の出番、というわけである。