エクイティプレミアムではなく利回りの変動:バーナンキ=カトナー再訪

というNBER論文が上がっているungated版)。原題は「Movements in Yields, not the Equity Premium: Bernanke-Kuttner Redux」で、著者はStefan Nagel(シカゴ大)、Zhengyang Xu(香港城市大)。
以下はその要旨。

We show that the stock market price reaction to monetary policy surprises upon announcements of the Federal Open Market Committee (FOMC) is explained mostly by changes in the default-free term structure of yields, not by changes in the equity premium. We reach this conclusion based on a new model-free method that uses dividend futures prices to obtain the counterfactual stock market index price change that results purely from the change in the default-free yield curve induced by the monetary policy surprise. The yield curve change in turn partly reflects a change in expected future short-term interest rates, as measured by changes in professional forecasts, and partly a change in the term premium. We further find that the even/odd week FOMC cycle in stock index returns is also largely due to an FOMC cycle in the yield curve rather than the equity premium.
(拙訳)
連邦公開市場委員会FOMC)声明が出された時の金融政策サプライズへの株式市場の株価の反応は、エクイティプレミアムの変化ではなく、債務不履行の無い金利の期間構造の変化によって概ね説明できることを我々は示す。金融政策サプライズにより引き起こされた債務不履行の無い金利の利回り曲線の変化だけによって生じる反実仮想的な株式市場指数の価格変化を配当先物価格を用いて得るという、モデルに依らない新たな手法に基づき、我々はこの結論に達した。利回り曲線の変化は、専門家予測の変化で計測される将来の予想短期金利の変化を部分的に反映するとともに、期間プレミアムの変化も部分的に反映する。我々はまた、株価指数リターンの偶奇数週のFOMCサイクルも、エクイティプレミアムではなく利回り曲線のFOMCサイクルが主因であることを見い出した。

タイトルのバーナンキ=カトナーは Bernanke and Kuttner (2005) *1を指す。この論文では、株価は主にエクイティプレミアムの変化によってFRBの声明に反応することが示されたが、今回の論文では、当時利用可能でなかった配当先物価格というデータを用いて、その結論を引っ繰り返したとの由。

株式リターンの偶奇数週のFOMCサイクルというのは Cieslak et al. (2019) *2で報告されている事象で、同論文のWPから該当の図を引用すると以下のようになる。

即ちFOMCを起点として数えた偶数の週にリターンが高まり、奇数の週にリターンが低くなる事象が観測されるという。
今回の論文でも以下のようにその図を再現し、利回り曲線の変化で説明できる、としている(パネルAは配当先物が利用できる期間での確認、パネルBはより長い期間での配当先物を使わない手法(キャンベル=シラーの現在価値法*3)での確認)。