インフレーション・アクセラレータ

というNBER論文が上がっているungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「The Inflation Accelerator」で、著者はAndrés Blanco(アトランタ連銀)、Corina Boar(NYU)、Callum J. Jones(FRB)、Virgiliu Midrigan(NYU)。
以下はその要旨。

We develop a tractable sticky price model in which the fraction of price changes evolves endogenously over time and, consistent with the evidence, increases with inflation. Because we assume that firms sell multiple products and choose how many, but not which, prices to adjust in any given period, our model admits exact aggregation and reduces to a one-equation extension of the Calvo model. This additional equation determines the fraction of price changes. The model features a powerful inflation accelerator—a feedback loop between inflation and the fraction of price changes—which significantly increases the slope of the Phillips curve during periods of high inflation. Applied to the U.S. time series, our model predicts that the slope of the Phillips curve ranges from 0.02 in the 1990s to 0.20 in the 1970s and 1980s.
(拙訳)
我々は、価格変化する割合が、時間とともに内生的に推移し、実証結果と整合的にインフレとともに増加する、追跡可能な粘着的価格モデルを構築した。企業は複数の製品を販売し、どの期においても、どれだけの価格が調整されるかを選択するが、どの価格が調整されるかは選択できない*1。その仮定により我々のモデルは、正確な集計を可能とし、カルボモデルに一つの方程式を拡張するに留まる。この追加された方程式が、価格変化する割合を決定する。モデルは強力なインフレーション・アクセラレータ――インフレと、変化する価格の割合との間のフィードバック循環――を特徴とし、それによって高インフレ期におけるフィリップス曲線の傾きを顕著に増加させる。米国の時系列に適用したところ、我々のモデルは、フィリップス曲線の傾きが1990年代の0.02から1970年代と1980年代の0.20の範囲にあると予測した。

*1:本文によると、この仮定によって、同様に価格変化の頻度が内生化されたモデルであるメニューコストモデルで生じる集計計算の厄介さが回避され、追跡可能なモデルになるとの由。なお、ここで企業は製品の連続体を販売することが仮定されている(そのため、製品について離散モデルにはなっていない)。