前回エントリで紹介した論文では、著者の一人のPhilip Barrettが他のIMF職員(Maximiliano Appendino、Kate Nguyen、Jorge de Leon Miranda)と開発した報道社会不安指数(Reported Social Unrest Index)が使われていた。以下はその指数開発時の表題のIMF論文*1(原題は「Measuring Social Unrest Using Media Reports」)の要旨。
We present a new index of social unrest based on counts of relevant media reports. The index consists of individual monthly time series for 130 countries, available with almost no lag, and can be easily and transparently replicated. Spikes in the index identify major events, which correspond very closely to event timelines from external sources for four major regional waves of social unrest. We show that the cross-sectional distribution of the index can be simply and precisely characterized, and that social unrest is associated with a 3 percentage point increase in the frequency of social unrest domestically and a 1 percent increase in neighbors in the next six months. Despite this, social unrest is not a better predictor of future social unrest than the country average rate.
(拙訳)
我々は、関連するメディア報道の数に基づく社会不安の新指数を提示する。この指数は130か国それぞれについて月次の時系列があり、ほぼ遅延なしに利用でき、容易かつ透明性が高い形で再現できる。指数のスパイクは大きな出来事を識別しており、それらのスパイクは、社会不安の4つの大きな波について、外部ソースによる事象のタイムラインと非常に密接に対応している*2。指数の横断面の分布は簡単かつ正確に特徴付けることができ、社会不安がその後6か月における国内の社会不安の頻度の3%ポイントの上昇と、近隣国の社会不安の頻度の1%の上昇と関連していることを示す。それにもかかわらず、社会不安は、将来の社会不安の予測指標としてその国の平均頻度よりも優れてはいない。
以下は報道の検索基準を示した表。
*1:2020年時点のWP。2022年にJournal of Development Economicsに掲載。
*2:本文では、2011年のアラブの春、2006-2014年のタイの政情不安、2014-2019年のベネズエラの政情不安、2000年代前半のカラー革命について、外部ソースにおける事象の記録と指数のスパイクとの対応を見ている。補足では、さらに、1986年のフィリピンのピープルパワー、1987年の韓国の6月民主抗争(cf. 6月民主抗争 - Wikipedia)、1994年の南アフリカのアパルトヘイト終焉に至る推移、2016-2017年の韓国のろうそく革命、1999-2019年の中東について同様の比較を行っている。