消滅しつつある指数効果

というNBER論文が上がっているungated版)。原題は「The Disappearing Index Effect」で、著者はRobin Greenwood、Marco C. Sammon(いずれもハーバード大)。
以下はその要旨。

The abnormal return associated with a stock being added to the S&P 500 has fallen from an average of 3.4% in the 1980s and 7.6% in the 1990s to 0.8% over the past decade. This has occurred despite a significant increase in the percentage of stock market assets linked to the index. A similar pattern has occurred for index deletions, with large negative abnormal returns on average during the 1980s and 1990s, but only -0.6% between 2010 and 2020. We investigate potential drivers of this surprising phenomenon and discuss the implications for market efficiency.
(拙訳)
株式がS&P500に追加されたことに伴うアブノーマルリターンは、1980年代の平均3.4%および1990年代の7.6%から、過去10年には0.8%に低下した。このことは、指数に紐づいた株式市場資産の割合が顕著に増加したにもかかわらず生じた。指数からの削除についても同様のパターンが生じ、1980年代と1990年代には大きなマイナスのアブノーマルリターンが生じていたのが、2010年から2020年の間は-0.6%にとどまった。我々はこの驚くべき現象の要因を調べ、市場効率性にとって持つ意味を論じる。

結論部では、主に2つの要因がこの現象をもたらした、としている。即ち、S&P中型株指数(S&P MidCap index)との間の移行組が増えたこと*1、および、指数の変化に対して市場が流動性を増加する能力が全般的に増したことである。また、第三の要因として、指数の変化の予測可能性が高まったことも排除できない、としている。一方、検討した5つの仮説の残りの2つ、即ち追加削除される企業の特性が変化したことと、市場の平均的な流動性が向上したことは、実際に生じた変化を説明できない、としている。

*1:その場合、S&P中型株指数からの削除[への追加]とS&P500への追加[からの削除]が同時に起こるので、指数運用におけるその株に対するネットの需要の変化がそれほど大きくならない。S&P中型株指数で運用するファンドが台頭したこともそのことの背景にある。