アレックス・タバロックが9/3付けMRブログエントリで、豪州のロックダウンは行き過ぎ、という主旨のアトランティック記事を紹介している(タイラー・コーエンもその少し前に「Has Australia gone too far?(豪州はやり過ぎたのか?)」というコメントを添えて同記事にリンクしている)。タバロックは、「今や豪州は世界で最も専制主義的な国の一つになった(Australia is now one of the most authoritarian states in the world)」というやや刺激的な文でエントリを書き出している。
アトランティック記事では、豪州の今の政策はもはや自由民主主義国のものとは言えないのではないか、と疑問を呈するとともに、自由の制限もワクチンを確保する間の一時的なものならまだ擁護の余地はあったが、実際には豪州はワクチン政策も失敗している、として以下のように書いている。
Instead, Australia invested inadequately in vaccines and, once it acquired doses, was too slow to get them into arms. “Of the 16 million doses of the AstraZeneca vaccine that have been released to the government by manufacturer CSL, only about 8 million have gone into the arms of Australians,” The Age reported on August 21, citing concern about blood clots and a widespread preference for the Pfizer vaccine.
(拙訳)
むしろ、豪州はワクチンへの投資が不十分だった。そしてワクチンを入手した後も、接種が遅すぎた。「製造者のCSLが政府に納入したアストラゼネカ1600万回分のうち、豪州人が接種したのは約800万回分だけである」と8月21日にジ・エイジ紙は報じ、血栓への懸念やファイザーのワクチンを多くの人々が選好する傾向を記した。
この豪州のワクチンの遅れについてタバロックは、1か月ほど前のMRブログエントリ――そちらのエントリでもタバロックは豪州の人権侵害を厳しく非難している――で、オーストラリアン・ファイナンシャル・レヴュー記事を引用している。以下はその一節。
At the end of 2020, as vaccines were rolling out en masse in the Northern Hemisphere, the TGA [Therapeutic Goods Administration, AT] flatly refused to issue the emergency authorisations other regulators did. As a result, the TGA didn’t approve the Pfizer vaccine until January 25, more than six weeks after the US Food and Drug Administration (FDA), itself not exactly the poster child of expeditiousness.
Similarly, the TGA didn’t approve the AstraZeneca vaccine until February 16, almost seven weeks after the UK.
In case you’re wondering “what difference does six weeks make?“, think again. Were our rollout six weeks faster, the current Sydney outbreak would likely never have exploded, saving many lives and livelihoods. In the face of an exponentially spreading virus that has become twice as infectious, six weeks is an eternity. And, indeed, nothing has changed. The TGA approved the Moderna vaccine this week, eight months after the FDA.
(拙訳)
2020年末、ワクチンが北半球で大規模に展開されている時、TGA(薬品・医薬品行政局)は、他の規制当局が行ったような緊急使用の認可をにべもなく拒否した。その結果、TGAはファイザーのワクチンを1月25日まで認可しなかった。それは米食品医薬品局(FDA)に遅れること6週間だったが、FDA自体も迅速さにおいて模範的とは言えなかった*1。
同様に、TGAは、アストラゼネカのワクチンを英国に遅れること7週間近くとなる2月16日まで認可しなかった。
「6週間は大した差ではないのでは?」と思ったとしたら、考え直してほしい。ワクチンの展開が6週間早かったら、現在のシドニーの感染は決して爆発的に拡大することは無く、多くの生命と生計が助かっただろう。感染力が2倍となったウイルスが指数関数的に広がっている時、6週間というのは永遠に近い。そして実際のところ、何も変わっていない。TGAはモデルナのワクチンを今週認可したが、これはFDAの8か月後である。