日本人経済学者がFRB副議長に抗議を申し入れへ

当編集部は、「日本人経済学者有志一同」と名乗る団体が、スタンリー・フィッシャー米連邦準備制度理事会FRB)副議長宛てに提出予定の公開書簡を独自に入手した。以下は、同書簡の全文(翻訳は当編集部)。

親愛なるスタンリー・フィッシャー米連邦準備制度理事会副議長:


私どもは、経済学者、および金融政策当局者としての貴兄の活動に対し、一方ならぬ尊敬の念を抱くものであります。しかし、2月11日のウォーリック経済サミットでの貴兄の講演の中にどうしても我々として看過できない内容が含まれていたため、大変遺憾ながらここに敢えて抗議の書簡をお送りする次第です。
2月11日の講演で貴兄は、計量経済モデルであるFRB/USモデルによるシミュレーションがいかにFRBの政策に反映されているかを説明されました。しかしながら、同モデルは、現在セントルイス連銀エコノミストの職にありますStephen Williamsonがかつて喝破したように、現代風の装いを凝らしてはいるものの、基本的にモデルとしては時代遅れであり、現代経済学の観点からすると使用に耐えないものであります。地区連銀の現職のエコノミストがこのように批判したという経緯があるにも関わらず、同モデルを政策決定のためにFRBが使い続けていることは、おそらく純粋な経済学とは別の何らかの理由があるものと推察します。
私ども日本人経済学者は、最近の日本銀行の金融政策の迷走を深く憂慮しており、最新の経済学からは説明することが難しいその政策を、いわゆる大人の事情によるものであろう、と考え、その点を痛烈に批判する活動を展開しております。しかしながら、ほかならぬFRBが、まさに大人の事情と呼ぶほかはない理由で時代遅れのモデルを政策決定に使い続けておりますことは、私どものそうした活動を背中から撃つような行為であり、私どもの批判の効力を大いに弱めることになります。ましてや、副議長の要職にある貴兄が公けの講演でそうしたモデルの使用を喧伝するような行為に及ぶに至っては、何をか言わんや、であります。ここに私どもは、貴兄の2月11日の講演に対し厳重な抗議を申し入れるとともに、その撤回と、FRB/USモデルの廃止を強く訴えるものであります。
私どもの申し入れを受け入れてFRBが正しい道に戻り、ひいては私どもの日銀の正常化活動の支援に資することを願ってやみません。


                                   日本人経済学者有志一同