エコノミスト誌のエディプスコンプレックス?

11日エントリでリンクしたGlomブログのErik Gerdingが、今度はEconomist誌の5大金融危機に関する論説噛みついている。その論説記事は、投資家をリスクから保護した改革がモラルハザードを招いて次の危機の原因となった、というトーンで書かれているのだが、同記事には以下の4つの重大な見落としがあるという:

  1. 多くの金融危機は国の救済やセーフティネットがさほど無い状況で起きた
    • エコノミスト誌は米国の1792年恐慌から話を始めているが、その時既に英国は1690年代末の危機や1720年の南海泡沫事件を、フランスはミシシッピ事件を経験していた。
    • エコノミスト誌は次に1825年恐慌を取り上げているが、英国はその後10年おきにバブルとその崩壊を経験している。それらの危機を政府のセーフティネットがどのように引き起こしたかは定かではない。
  2. 19世紀の英国の危機――1825年恐慌、1837年恐慌、1847年危機、1857年危機、1866年のオーバーレンド・ガーニー危機――においては、会社法の自由化や企業株主の有限責任の拡大が先行していた
  3. 1866年のオーバーレンド・ガーニー危機後に英国で平穏な期間が50年続いた理由
    • エコノミスト誌は、一部の歴史家の見解として、モラルハザード要因を失った銀行部門が慎重になったため、と記述している。
    • だが、多くの経済学者は、イングランド銀行が危機時に最後の貸し手としての役割を担うようになったことの方が理由として大きい、と考えている。その考え方の創始者は誰あろう、エコノミスト誌の伝説的な編集長であるウォルター・バジョットである。その点に言及しなかったのは一種のエディプスコンプレックスか?
  4. 1929年の大暴落について語る際に、FRBへの批判に言及していない
    • FRBが最後の貸し手として機能しなかったこと、重大な節目で破壊的な金融政策を追求したことへの批判に触れていない。
    • そうした批判者が推奨する金融政策は国家による介入であり、セーフティネットを通じてモラルハザードを招くものであるが、エコノミスト誌の主張に反し、そうした介入は必要。その不可避性を踏まえた上で、金融機関の規制方法を考えるべき。