についてウェスリアン大学のリチャード・グロスマン(Richard S. Grossman)が書いた下記の本がEH.netで取り上げられている(H/T Mostly Economics)。
Wrong: Nine Economic Policy Disasters and What We Can Learn from Them
- 作者: Richard S. Grossman
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand
- 発売日: 2013/10/24
- メディア: ハードカバー
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それによると、以下の経済政策が9大失敗だという:
- 革命の直前に航海条例を強化した英国の決定*1
- 第一および第二合衆国銀行を手仕舞いした米国の決定*2
- ジャガイモ飢饉の時にアイルランドへの援助を制限した英国の決定
- 第一次大戦後にドイツに法外な賠償金を課した連合国の決定
- 第一次大戦後に戦前の平価で金本位制に復帰した英国の決定
- スムート=ホーリー関税の関税率を引き上げた米国の決定
- 日本における不動産バブルとその崩壊、および、1990年代の長い期間に亘って銀行が不良資産を抱え続けることを許した決定
- ユーロ採用の決定
- 米国のサブプライムローン危機
グロスマンは、そうした政策の失敗の主因をイデオロギーに帰しているとのことである。もし「冷徹で堅固な経済分析」に基づいて決定を下していたら、そうした失敗は避けられただろう、とグロスマンは言う。イデオロギーの働いた例としては、航海条例における重商主義、第二合衆国銀行におけるアンドリュー・ジャクソンの反銀行主義、アイルランド飢饉における英国のレッセフェール主義、金本位制復帰における19世紀の金本位制が正しいという信念、サブプライム危機における自由市場主義、をグロスマンは挙げている。それ以外に既得権益(スムート=ホーリー関税)や他者への共感の不在(ジャガイモ飢饉、ドイツの巨額の賠償金)や不運といった要因も働いていたものの、やはり主因は誤ったイデオロギーへの固執だ、とグロスマンは指摘しているとの由。
これについてEH.netの評者Hugh Rockoffは、同じ問題を巡って著名な経済学者が正反対の見解を示すなど(ex. ユーロを巡るマンデルとフリードマンの見解)経済学が明確なガイドラインを与えてくれない場合、政策決定者はイデオロギーに頼らざるを得なくなるのではないか、という見方を示している。