政府の効率性を測る手紙・補足

昨日紹介した論文での日本の「成績」に関する反応をはてぶで幾つか頂いたので、補足として以下の図を論文から引用しておく。

これは手紙の返送率とイノベーション能力指数(Innovation capacity index)の相関を描いた散布図だが、縦軸はどうやら返送率そのものではなく、返送率を回帰で調整したもののようである*1。その調整に使用した項目は

  • 人口当たりの恒久的な郵便局数
  • 郵便番号データベースの充実度
  • ラテン系アルファベットが使用されているか否か

の3つで、それらで調整すると、日本(赤丸)は米国(青丸)より返送率が高くなっている。
このうち郵便番号データベースの充実度は、localities/discricts/streetsのどのレベルまで紐付けされているかで4段階の点数が付けられており、Appendix Dによると日本は最高段階の点数が付けられている。そうしてみると、上図で日本が米国やフィンランドよりも上位に来ているのは、ラテンアルファベットを使用していないにも関わらず返送率が高かった、という要因が大きいように見える。
ちなみにAppendix Dでは、実験に使用した日本宛の架空住所の一例が併せて表記されているが、それによると、ここで言うdistrictは市区町村郡、streetsは町名番地に対応しているようである。

Letter ID Name Company Street Address District Postcode City Country
JPN_4 Akihito Ozawa Supply Management United Simonuki Chuo-ku 541-0045 Osaka-shi, Osaka-fu Japan


なお、日本ではそもそも郵便は民営化されている、という反応も頂いたが、論文の参考文献リストに開発経済学関係の論文が多く挙がっていることからすると、著者たちの主眼はあくまでも郵便を民営化できるような余裕なぞまだ無い発展途上国の政府にあり、先進国はせいぜい比較対照用という位置づけで考えているように思われる。

*1:図の説明では
The following four graphs show the partial scatter plot of "got the letter back" and the measures of management quality used in Table 4 of the paper for the sample of countries with available data. These plots correspond to the first four regressions in Table 4 of the paper.
と記述されている(ここで引用したのはその4つのグラフの4番目で、表4の回帰のInnovation capacity index以外の説明変数が本文で説明した3項目である)。