ファウンデーションの彼方へ

最近、マクロ経済学のミクロ的基礎付けが改めてエコノブロゴスフィアを賑わせているが、libertarian clownを名乗るオクラホマ大学のKevin Grierが、Angus(Grierのハンドルネーム)の不可能性定理なるものをブログで提唱しているEconomist's View経由)。

曰く:

  • 純粋にミクロに基礎付けられたマクロモデルで予測に役立つものは存在しない。
    • 最初のRBCモデルは純粋にミクロに基礎付けられたモデルだったが、経済の推移を追跡するには何ら役に立たなかった。
    • 我々は貨幣について良いミクロ的基礎付けさえ持ち合わせていない。効用関数に入れるか、キャッシュ・イン・アドバンス制約を恣意的に掛けるのがせいぜい。そもそも最初のRBCモデルに貨幣が入っていなかった理由の一つもそれ。
  • 西側諸国の中央銀行は、予測に実際に役立つDSGEモデルの構築に多大の予算と人員を費やしてきた。しかしながら、その過程で、事実上、ミクロ的基礎付けを放棄した。
    • モデルがうまく機能するようにするため、実証の如何に関わらず、最良の予測を提供するミクロ的基礎付けを採用した。
    • もしくは、ミクロ的基礎付けを伴わないアドホックな摩擦を追加した。
    • もしくは、ショックを次から次へと追加し、「経済変数Xの変動の多くはショックによりもたらされた」というようなことを言った。
  • つまり、政策や経済厚生の変化を正しく評価するためには完全なミクロ的基礎付けを持つモデルを使う必要があるが、それは現実にフィットしないことが分かっている。一方、現実にフィットさせるためには、ミクロ的基礎付けを完全に放棄するのに近いところまで行く必要がある。