アワーレス・リカバリー

昨日に引き続き、米国の景気回復と生産性を巡る話題。


レベッカワイルダーが、今回の景気回復をジョブレス・リカバリーならぬアワーレス・リカバリー(The hourless recovery)と呼んでいるAngry Bearにもクロスポストされている)。

理由は、以下のように回復当初の3四半期の経済成長率を生産性と労働時間に分解した場合、労働時間の寄与が(その直前2回の景気回復期と同様)マイナスになっているため*1


ちなみに、以下のように製造業の労働時間はここ10年来の高い水準に達している。従って、サービス業が労働時間停滞の主犯である、とワイルダーは述べている。



なお、ワイルダーがリンクしているmacroblogでは、同じ回復初期3四半期の経済成長率について、以下のようにもっと細かな要因分解を行っている。

ここでPOPは人口、Y/Hは労働生産性、H/E*は一人当たり労働時間、E/Lは1-失業率、L/POPは労働力人口比率である(E*は非農業部門雇用者数、Eは家計調査ベースの労働者数なので、E*/Eは両者を調整する係数ということになる)。
これを見ると、ワイルダーのグラフで労働時間数の寄与がマイナスになったのは、一人当たり労働時間が減ったからではなく(直近3回の景気回復期ではそれはいずれもプラスになっている)、就業率が減少したためであることが分かる。結果として、労働生産性の寄与度は100%を超えている。


ただ、今後もこの傾向が継続するかという点については、ワイルダーもmacroblog(の筆者のJohn RobertsonとPedro Silos)も懐疑的である。
ワイルダーのAngry Bearエントリのコメント欄では、今年第1四半期の労働時間の前年同期比が-3.0%である一方、前期比(季調済み年率)で見ると生産性成長率が2.8%、産出成長率が4.0%、従って労働時間の増加率が1.1%となっているので(cf. ここ)、景気回復期特有の労働生産性の高い伸びは終わりを迎えつつあるのではないか、とコメントしている人がおり、ワイルダーもその見方に同意を示している。
macroblogも、第2四半期には労働生産性の経済成長率への寄与度は大きく低下するだろう、と予測している。ちなみにmacrologのホスト主であるアトランタ連銀の総裁デニス・ロックハートは、「I expect recovery in the medium term to be neither jobless nor job rich」と観測しているとの由。

*1:今回の景気回復開始期は未確定だが、ここでワイルダーは、GDP成長率がプラスになった2009年第3四半期を開始期と置いている。