それによると、最近ではドイツ経済の好調を示す統計が相次いで発表されているという。
- 8月の鉱工業生産は1.7%上昇した。これはブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の0.5%の3倍以上の数字である。前年同期比では10.7%となる。それまで2ヶ月は低迷していたが(7月は0.1%)、これで外需の先行きや復活に対する懸念は払拭された、と言うエコノミストもいるとのことである。
- 失業者数は18年ぶりの低水準にある。
- 消費者信頼感はこのところ上昇している。
- インフレも上昇基調にある。
- 製造業受注は平均して月2%で伸びている。これは景気後退前の平均0.5%を大きく上回っている。
しかしワイルダーは、Ifo景況感指数を元に、ドイツ景気の先行きに悲観的な予測を立てている(下図)。
これはIfoの予測指数と現況指数の差を、鉱工業生産指数の成長率と6ヶ月ずらして並べて描写したものだが、両者の連動性は高い。Ifo指数の差は2月にピークをつけてその後は急落したので、鉱工業生産もこれから落ち込むだろう、というのがワイルダーの見立てである。
これはデータマイニングであることはワイルダーも認めているが、輸出がGDPの46%を占めるドイツ経済の状況を考えると、外需の減速の影響は小さくない、とワイルダーは述べている。
ちなみにWSJブログのこのゲスト記事(Third wayというシンクタンクのEd Gerwinが執筆)によると、ドイツの輸出産業の強さは以下の5つの要因に支えられているという。
- 政府が外交レベルで積極的に売り込みを図っている。
- 政府が輸出振興に対し経済規模比で見て米国の2倍の予算を投入している。
- 新興国が買いたいと思う資本財を製造している。また、世界市場を席巻するような輸出に強みを発揮するニッチ製品(車のサンルーフなど)を製造する家族経営の中小企業をドイツは特に支援している。
- 政府、企業、労働者がチームとして一体となって輸出競争に勝とうとしている。
- 新たな輸出市場に対し粘り強く挑戦を続ける。
米国がオバマ政権の言うように輸出指向を強めるつもりならば、この5つを教訓とすべし、というのがGerwinの記事の趣旨である*1。
*1:この5つの要因は(少なくとも一時期の)日本の特徴でもあったわけであるが…。