文部科学省が大学の経済学部課程に必修科目を追加

文部科学省は、脱ゆとり教育の一環として、大学のカリキュラムについても指導を行なうことになった。まず、経済学部を対象に、新たに必修科目を追加する。
追加される科目は「反実仮想学習(仮)」。文部科学省が先に実施した調査では、日本の経済学が欧米に比べて劣る原因として、経済学者がモデルに基づいて様々な状況を仮想する力が弱いことが第一に挙げられた。日本の経済学者は、ともすれば教科書に書かれていることを金科玉条とする訓詁学に陥りやすい、というわけだ。そこで、新しい科目では、従来の教科書や目の前の現実からいったん離れて物事を考える力を養うことを狙う。
しかし、この科目のために新規の教科書を策定することは資金的にも時間的にも厳しいため、とりあえずアイザック・アシモフの「ファウンデーション」シリーズを教本とする。このシリーズは米国のノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンプリンストン大学教授が少年期から親しみ、経済学者を志向するきっかけになったことで有名。文部科学省によれば、クルーグマン以外の欧米の一流の経済学者もサイエンス・フィクション(SF)に通じている人が多いので、そうしたSF小説に馴染んでもらうことが、学生の経済学的思考を高める早道と判断した。アシモフのほか、アーサー・C・クラークフィリップ・K・ディックの作品も教材に採用する予定。
さらに、SFではないが、「刑事コロンボ」や「Dr.HOUSE」といったテレビドラマも教材に加えることが計画されている。これは、日本の経済学者のもう一つの弱点とされる推理力の弱さを補うためだ。
「たとえば刑事コロンボでは、社会的地位のある犯人の説明に対し、自分がどうしても腑に落ちないことについてコロンボが徹底的に食い下がる。Dr.HOUSEでは、ハウスが自分の説明に納得する部下に対し、何か反論しろ、と挑発したりする。日本の経済学の研究では、既存の権威ある理論や研究に合わせて自分の分析結果を解釈して事足れりとする傾向が強く、得てしてその解釈に矛盾する事実に目をつぶってしまう。権威を気にせずに細かな事実に気を留める習慣を学部生時代から身につければ、日本の経済学全体の底上げにつながる」と、文部科学省の担当課長はその狙いを語る。