財政再建のための10の方法

ジェフ・フランケルというハーバード・ケネディスクールの教授が、ナショナル・ジャーナルによる財政再建に関する以下の11/30付けの問いかけに対し、10項目のリストを挙げているEconomist's View経由)。

President Obama and his team said recently that the fiscal 2011 budget will represent a credible effort to reduce budget deficits and put the federal government on a path toward "sustainable" deficits of not more than 3 percent of GDP by 2016. How would you alter taxes and spending to achieve (or at least pursue) that goal? Would you allow the Bush tax cuts for the middle class to expire? Cut discretionary spending across the board, perhaps through a Gramm-Rudman-Hollings-like approach? Can spending be cut enough, or taxes increased enough, to meet the 3 percent goal in 2016?
(拙訳)
オバマ大統領とそのチームは、最近、2011年には財政赤字を減らす確かな努力を行い、2016年までには「維持可能な」赤字としてGDPの3%以内に抑えるという方針を示しました。これを達成する(少なくとも追求する)ために、あなたならばどのように税金や支出を変更しますか? 中間層へのブッシュ減税を終了させますか? たとえばグラム・ラドマン・ホリングス法のような方法で裁量的支出を例外なく削減しますか? 2016年の3%という目標達成のために、支出が十分に削減されるか、税金が十分に増やせると思いますか?

http://economy.nationaljournal.com/2009/11/obama-and-the-deficit-1.php


フランケルの挙げた10のリストは以下の通り。

  1. 温暖化対策の排出権の大部分を企業に無償配布する(それによって彼らに棚ぼたの利益を与える)のではなく、オークションで売却する。これは元々、2月にオバマ大統領が提案したことだったが、議会の温暖化対策法案に盛り込まれなかった。
     
  2. ガソリン税を上げる。これは、歳入を増やすだけではなく、交通渋滞や事故や環境汚染を減らし、貿易赤字も減少させ、中東の石油への依存度も下げることになる。
     
  3. 裕福な農家や農企業への農業補助金を削減する。それによって支出を減らすだけでなく、経済効率性を高める。これもオバマが大統領就任時に提案し、議会に拒否された政策である。
     
  4. 軍が欲していないにも関わらず、供給者が議会の大物と近しいために保有され続けている高価な武器を削減する。オバマ大統領とゲーツ国防長官は、驚くべきことに、F22についてそれをやってのけた*1
     
  5. 有人宇宙探査を中止する。我々はそれを必要としていない。その代わり、その半額を、エネルギーや医療(そして無人宇宙探査)といった有用な科学に回す。*2
     
  6. 現行法のジョージ・W・ブッシュの富裕層への減税を終了させる。もちろん、2010年に相続税を全廃し、その後は2001年の水準に戻すというブッシュのプランは馬鹿げている。その代わり、我々は、相続税の対象となる遺産規模の閾値を、適切な値にすべきなのだ。たとえばそれを数百万ドルといった高い水準にすれば、相続人が税金を払うためにわずかな農地や小さな企業を手放さなければならない、という感情的なエピソードに終止符が打てるだろう。
    • そうして得られた歳入は代替的最小課税制度(Alternative Minimum Tax=AMT)の最終的な是正に使うべき。同時に、AMTやイラク戦争やアフガン等の財政費用を正直に明らかにするというオバマの努力は継続すべき。ブッシュは常にそうした費用をわざと低く見積もり、彼の放漫な財政政策が将来の財政で十分賄えると見せ掛けた。それによる政府債務の増加は、今日の不況対策による増加をはるかに上回る。
       
  7. 病院の治療を国の最善医療に標準化することを促す。それによって不要な検査や処置を省く。促進の手段としては、たとえば最善医療をメディケアの支払い条件とする。これも本来のオバマ政策に含まれていた。
    • 政府が控えめな形で医療に関わることにさえ「社会主義」のレッテルを貼るラジオのトークショープロパガンダに惑わされてはならない。彼らの論理を踏襲すると、優れた医療を比較的良いコストパフォーマンスで提供している退職軍人の病院を廃止することになってしまう。その次はメディケアの廃止だ。
       
  8. 雇用者負担の医療保険への免税措置を制限するか廃止する(マケイン上院議員の提案)*3。少なくともとても高価な割には健康への効果が少ない豪華プランについてはそうすべき(ケリー上院議員の提案)。
     
  9. 理想を言えば、住宅ローン利子の税金控除も廃止すべき。しかしこれを提案することは政治的自殺に等しい。議会でも一般の人々の間でも、持ち家信仰が未だに根強く、住宅やその他資産の賃貸に対する抵抗感が強い。そうした傾向に沿った政策方針が住宅バブルの生成と崩壊の要因となったにも関わらず。
     
  10. 社会保障制度の救済のため、退職年齢を(少しだけ)引き上げ、高所得への課税を(少しだけ)引き上げ、将来の退職者の給付を徐々に賃金の上昇ではなく物価の上昇に(少しだけ)インデックスするようにする。

*1:この決定で日本がとばっちりを受けたのは報道されている通り

*2:クルーグマンもコロンビア号事故の後に同様のことを書いていた。

*3:cf. このエントリ