サマーズのヤリタ☆りなかったり〜

景気対策をもっと大規模にできなかったのか、というエズラ・クラインのインタビューでの質問に対し、ローレンス・サマーズが4つの論点を挙げている(Economist's View経由)。

  1. オバマ政権は議会が認めるよりも大規模な刺激策を提案した。
    • 法案の審議過程で約20%削減され、しかもやっと通過した。
  2. 2009年にオバマ政権の経済チームは、財政政策をやり過ぎることは無い、と進言した*1
    • サマーズ自身、財政政策のやり過ぎを心配するのは、自分が体重を減らし過ぎて拒食症になるのを心配するようなものだ、という冗談を飛ばした。可能性は存在するが、主要なリスクたり得ない、ということだ。
    • 一方、政治アドバイザーチームは、額を見て議会が拒絶反応を起こす、もしくは大幅な遅延を招くのを恐れ、当初の刺激策の規模を絞った。それは正しかったと思う。
  3. 政治を抜きにしても、2009年に急速に支出を拡大することには困難があった。
    • いわゆる「ショベルですぐに取り掛かれるプロジェクト(shovel-ready projects)」は実際にはすぐには開始できないことが多かった。刺激策の資金をうまく動かすに当たってバイデン副大統領とそのチームの功績が大だったことは関係者ほぼ全員が認めることだが、直ちに始められるインフラ計画にもっと多くの資金を流し込むのは不可能だった、というのは彼らが真っ先に指摘するところだろう。
    • もちろん、減税や州・地方政府への補助金を増やすことは可能だったろうが、いずれにも深刻な政治的制約が付き纏った。
  4. 2009年冬には、結局のところもっと刺激策が必要になると思われた。その場合、2010年の失業保険の期間延長を梃子にその刺激策を議会に通せる、と我々は踏んでいたが、その見方は誤っていた。失業保険、職のインセンティブ、インフラ関連を大きく拡充した政権の提案は、2009年秋に下院は通ったものの、上院は通らなかった。
    • 話の重心は職の創出から財政赤字削減へと大きく移っていった。
    • 昨秋に大統領がブッシュ減税の延長を給与税減税とカップリングできたのは幸運だった。それが無ければ、今頃二番底に陥っていただろう。


このサマーズの見解に対しEconomist's ViewのMark Thomaは、以下のように批判している。

  • ベースライン予測が楽観的過ぎたことの説明になっていない。それが楽観的過ぎたことにより、財政刺激策の効果が無かったように思われており、さらなる刺激策の必要性も乏しいものと思われている。
  • もっと刺激策が必要になる「と思われた」ということは、既存の刺激策で十分だったかもしれないとも考えていた、ということだ。彼らはもっと必要になるかどうかを見極めようとしたわけだが、実際にはまったく足りなかった。サマーズは、必要額は分かっていたがそれが得られなかった、と言わんばかりの口ぶりだが、実際に分かっていたかは疑問。

*1:cf. このエントリの注5。