"The Great Bust Ahead"という本の宣伝ページに以下のような図が掲げられている(ワシントンブログ経由)。
図に付けられている説明文を訳すと次のようになる。
日本の1990-2003年の深刻な経済不況は、同様*1の人口との関係によって生じたのか?
データはそうであることを示している。チャートは日本政府の統計に基づいている。この図では、インフレ調整済み日経平均と、41歳を中心とする5歳区切りの人口層を描いている。日本の労働省(ママ)によると、大企業では労働者が50歳に達するまで賃金が上昇するが、小企業ではそれが40歳である。そして米国と同様、労働者の圧倒的多数は小企業に勤務しているので、日本の労働者の支出が多い年齢は米国より数年はやく、おそらく41歳近辺だろう。米国の図と同様、インフレ調整済み日経平均(経済)は当該人口の低下に沿って動いている。2003-4年には当該人口は上昇に転じ、日経平均もそれに伴って上昇した。しかし米国と同様、サブプライム危機の影響を受けて、2008年には低下している。世界第二位の工業化された民主主義国で同様の関係が見い出されたということは、「THE GREAT BUST AHEAD」で提示した命題の正しさについての強力な追加証明である。日本が1990-2003年に本当の恐慌を免れたのは、輸出に支えられたGDPが、1990年代に好況を謳歌した西側諸国の経済に支えられたために過ぎない。
「労働者の圧倒的多数は小企業に勤務している」とか「日本が1990-2003年に本当の恐慌を免れたのは、輸出に支えられたGDPが、1990年代に好況を謳歌した西側諸国の経済に支えられたために過ぎない」といった眉唾ものの表現もあるが、支出の多い年代の人口動態と景気の関連を見るというのは、分析の視点としては面白い。
ただ、これは著者ダニエル・アーノルド(Daniel A. Arnold)の独創というわけではない。ワシントンブログでは、ハリー・デント(Harry Dent)というフィナンシャルアドバイザーが、こうした見方による分析の第一人者として紹介されている。実際、アーノルドの本のタイトルも、デントの本The Great Boom Aheadを元にしているようだ。
そのデントは、自身のHP*2で以下のような図を示し、2009年現在から、団塊ジュニアが40代になる2020年までは日本経済は上昇基調だろう、という楽観的な見方を示している(邦訳されているこの本でも同様の見解が述べられているようだ)。ただ、これはあくまでもサブプライム問題を考慮に入れていない分析である点には注意を要する。
なお、前述のワシントンブログエントリは、「The OTHER Economic Crisis(もう一つの経済危機)」と題して、人口問題を今後の世界的な経済問題として取り上げている。そこでは、人口動態に関するネット上の各種資料を紹介しているが、その中で目を引くのが、下記の国連統計を基にした老齢従属人口比率のグラフである(ソースはCredit Writedowns*3)。
今の若者が老人となる2050年には日本の同比率は70%台半ばに達し、他国に比べても突出した高さになる。この時の(現在と攻守ところを変えた)世代間対立の深刻さは、今の比ではなくなっているのかもしれない。