OECD諸国の公的債務削減から学べること

というVoxEU記事をMostly Economicsが紹介している。原題は「What we can learn from public debt reductions in OECD countries」で、著者はÁlvaro Pina、Mauricio Hitschfeld、Takashi Miyahara。1970年代後半以降のOECDの33か国の債務削減の成功例を分析したものだという(元論文はDrivers of public debt reductions | OECD)。
以下は冒頭の一節。

Sustained primary budget surpluses have been a key driver of declining debt ratios, reflecting favourable cyclical conditions coupled with consolidation efforts that have changed the composition of the public finances. Expenditure restraint has curbed subsidies and moderated the upward trend in pension outlays, while largely sparing healthcare and education. Corporate, but not personal, income tax revenues have strongly increased.
(拙訳)
持続的な基礎的財政黒字が債務比率を下げる主因であった。これは、景気循環の好ましい状況と、公的財政の構成を変える緊縮の努力との組み合わせを反映している。歳出抑制は補助金を抑え、年金支出の上昇傾向を緩和した一方で、医療と教育は概ね容認された*1。個人所得税収入は増えなかったが、法人所得税収入は大きく増えた。

以下は歳出入の各項目の対潜在GDP比率がベースライン年に比べてどれだけ変化したかを示した記事の図(論文の表3と表4から作成したと思われる)。

Source: OECD Economic Outlook 98 database; OECD Economic Outlook 115 database; AMECO database, European Commission’s Directorate General for Economic and Financial Affairs; and authors’ calculations.

赤は債務削減した期間とそれに至る期間(削減期間前の最大5年間)、青は持続的な債務削減が無かった緊縮財政の期間。色付きバーは95%で有意、項目名の横のアスタリスク(*)は赤と青の差が95%で有意であることを示す。投資は持続的な債務削減が無かった緊縮財政の方が債務削減した場合よりも減少率が有意に大きいが、成長を支える要因を闇雲に削ると債務削減には寄与しないことを示しているようで、小生が日本経済の個人的な理解 - himaginary’s diaryなどで論じた野放図な緊縮財政の危険性と、公的な研究開発の社会的収益 - himaginary’s diaryなどで論じた研究開発投資の重要性を裏付ける結果と言えそうである。

以下はスペインについて債務削減の時系列推移を示した図。

*1:ただし、論文から引用した次の図を見ると、医療の支出減少は確かに債務削減した場合について非有意だが、教育は有意である。