動的な電気料金の効率性

というNBER論文が上がっているungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「The Efficiency of Dynamic Electricity Prices」で、著者はAndrew J. Hinchberger(ノースウエスタン大)、Mark R. Jacobsen(UCサンディエゴ)、Christopher R. Knittel(MIT)、James M. Sallee(UCバークレー)、Arthur A. van Benthem(ペンシルベニア大)。
以下はその要旨。

The marginal cost of electricity fluctuates hour-by-hour, yet retail customers typically face flat prices. Using data from all seven US wholesale markets and a new method to evaluate alternative rates set in advance that accounts for equilibrium price effects, we estimate efficiency gains from time-varying price schedules that better align price with cost. We have three main results. First, time-of-use rates and critical-peak pricing, the two most common time-varying rate plans, each correct about 10% of mispricing. Second, complex rate structures based on historical prices often backfire. Third, real-time pricing with price ceilings can capture most potential efficiency gains while limiting customer risk.
(拙訳)
電気の限界費用は時間ごとに変動するが、小売顧客には均一料金が課されるのが普通である。7つの米国の卸売市場すべてのデータと、均衡価格効果を説明する予め設定された代替的な料金を評価する新たな手法を用いて我々は、価格と費用をより上手く整合させる時変的な価格スケジュールによる効率利得を推計した。我々は3つの主要な結果を得た。第一に、最も一般的な時変的料金プランである時間帯別料金と緊急ピーク時課金*1はそれぞれミスプライシングの約10%を修正した。第二に、過去の価格に基づく複雑な料率構造は裏目に出ることが多い。第三に、価格上限のあるリアルタイム価格は、顧客のリスクを制限しつつ、潜在的な効率利得の大半を捕捉することができる。

著者たちの推計によれば、ミスプライシングによる非効率性は年間20億ドルに上るとのこと。1割の効率利得の大部分は、料率が2つだけの時間帯別料金で達成されるとの由。過去の価格に基づく料金設定が駄目なのは、アウトオブサンプルのパフォーマンスが悪いためだという。効率性を上げるためにより重要なのは、緊急ピークをよりタイムリーなコスト情報に基づくようにすること、との由。

*1:2つの用語の邦訳はこちらを参考にした。