というNBER論文が上がっている(昨年3月時点のWP)。原題は「Dynamics in Evolving Regimes」で、著者はJeffrey A. Frankel(ハーバード大)、Yao Hou(ロチェスター大)、Danxia Xie(清華大)。
以下はその要旨。
This paper develops a new econometric framework to estimate and classify exchange rate regimes. They are classified into four distinct categories: fixed exchange rates, BBC (band, basket and crawl), managed floating, and freely floating. The procedure captures the patterns of exchange rate dynamics and the interventions by authorities under each of the regimes. We pay particular attention to the BBC and offer a new approach to parameter estimation by utilizing a three-regime Threshold Auto Regressive (TAR) model to reveal the nonlinear nature of exchange rate dynamics. We further extend our benchmark framework to allow the evolution of exchange rate regimes over time by adopting the minimum description length (MDL) principle, to overcome the challenge of simultaneous two-dimensional inference of nonlinearity in the state dimension and structural breaks in the time dimension. We apply our framework to 26 countries. The results suggest that exchange rate dynamics under different regimes are well captured by our new framework.
(拙訳)
本稿は、為替相場レジームを推計し分類する新たな計量経済学の枠組みを構築する。それらは4つの独立したカテゴリに分類される。固定相場、BBC(バンド、バスケット、クロール)、管理変動相場、自由変動相場である。手順では、為替相場の動学と各レジーム下での当局の介入のパターンを捕捉する。我々は特にBBCに注目し、3レジーム閾値自己回帰(TAR)モデルを用いたパラメータ推計の新たな手法を提示し、為替相場の動学の非線形な性質を明らかにした。我々はまた、我々のベンチマークの枠組みを拡張し、最小記述長(MDL)*1原則を適用することにより為替相場レジームが時間と共に推移することを許容し、状態次元における非線形性と時間次元における構造的な断層の2次元同時推計という課題を克服した。我々はこの枠組みを26か国に適用した。その結果は、異なるレジーム下での為替相場の動学が我々の新たな枠組みで上手く捉えられていることを示している。
WPの冒頭では、金融当局が公言している為替相場制と実際の為替相場制が大きく違うことが、研究者が実際の分類を試みる研究動機となっていることを指摘している。
今回の研究の対象国は以下の通り
導入部では、広く知られた変動相場制の国(オーストラリア、カナダ)、ペッグ制を厳守する国(中東の原油輸出国)、中間レジームを採る国(アジア、中南米)をサンプルに含めた、としている。
以下は判定のフロー図。
以下は結論部に記された主要な結果。
- 変動相場制の国は、当然ながらほとんどの期間は為替を変動させるが、外為市場に介入する能力を完全に放棄したわけではなく、大きく変動した場合には安定化のために力強い対応を実施する。
- BBCレジームは、中間レジームを追求する国で広く採用されている。そのうちシンガポール、南ア、メキシコ、コロンビア、タイでは、比較的安定した目標範囲と、範囲を外れた場合に介入する一貫したルールを長期的に維持している。
- 管理変動相場制を維持する国は少なく、期間も短い。
- 時変的な統計的推計を可能にしたことにより、中国、インド、ロシアという重要な新興国における過去20年間の為替相場レジームの変化も明らかになった。
- 中国は2005年の制度改革とその後の取り組みにより、為替相場の変動性が徐々に増した。ただ、範囲を外れた場合の介入の強度は減じておらず、期間を通じてその強度は高かった。
- インドとロシアも同様に固定相場制から管理変動相場制に移行したが、中国よりも大きな変動を許容している。ただし介入はまだ時折り行っている。
*1:cf. 最小記述長 - Wikipedia。