涼しい都市:都会の樹木の価値

というNBER論文が上がっている2021年時点のWP)。原題は「Cool cities: The value of urban trees」で、著者はLu Han(ウィスコンシン大学マディソン校)、Stephan Heblich(トロント大)、Christopher Timmins(ウィスコンシン大学マディソン校)、Yanos Zylberberg(ブリストル大)。
以下はその要旨。

This paper estimates the value of urban trees. The empirical strategy exploits an ecological catastrophe — the Emerald Ash Borer (EAB) infestation in Toronto to isolate exogenous variation in neighborhood tree canopy changes. Adding one tree to a postcode increases property prices by 0.40%; the hardest-hit areas lost 7% tree cover, resulting in a 6% property price decline. The tree premium includes the value of tree services and aesthetics. Our results demonstrate a significant impact of trees on mitigating urban heat and generating energy savings. However, the total amenity value of trees exceeds the combined value of these services.
(拙訳)
本稿は都会の樹木の価値を推計する。実証方法としては、生態系における惨事を利用する。即ち、トロントでアオナガタマムシが繁殖したために近隣の樹冠が外生的に変化したことを利用する。ある郵便番号の地域に一本の樹木が追加されると、不動産価格は0.40%上昇する。最も被害の大きかった地域は樹木によるカバーを7%失い、不動産価格が6%低下した。樹木のプレミアムに含まれるのは、樹木の提供するサービスと美観の価値である。我々の結果は、都会の熱を軽減し、エネルギー節約をもたらす上での樹木の顕著な影響を示している。しかし、樹木のアメニティの総価値は、そうしたサービスの価値の合計を超えている。

Asian Bureau of Finance and Economic Researchという団体の2021年の年次大会での討論者のスライドはこちら
日本ならばビッグモーターの周辺の変化を外生的な変化として利用することが思い浮かぶが、場所が限定的なので実際に分析するのは難しそうである。