というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Nonprofits and the Scope of Government: Theory and an Application to the Health Sector」で、著者はKaren Eggleston(スタンフォード大)。
以下はその要旨。
Nonprofits supply many tax-financed services like healthcare and education. Yet nonprofits are absent from the canonical property rights theory of ownership. Extending the government “make or buy” decision to nonprofits and ex post frictions based on contracts as reference points suggests that contracting out to a nonprofit can be optimal when “mission” alignment credibly signals adherence to the spirit and not just the letter of the contract in unforeseen contingencies. The model sheds light on differential nonprofit presence across the spectrum of basic services, as illustrated by an application to the health sector.
(拙訳)
非営利団体は、医療や教育のような税金によるサービスを数多く供給する。しかし、標準的な所有の財産権理論から非営利団体は欠落している。政府の「製造するか購入するか」という決定を非営利団体に拡張し、契約を参照点として事後の摩擦を織り込むと、「目的」についての意識の一致が、予期できない事態において契約の文字面だけでなく精神を遵守することを信頼できる形でシグナリングするのであれば、非営利団体に契約を請け負わせることが最適となり得ることが示される。モデルは、各種の基本サービスにおける様々な非営利団体の存在に解明の光を当てるが、そのことを医療部門への応用を例にとって説明する。
この論文は、Oliver Hart、Andrei Shleifer、Robert W Vishnyの1997年の論文「The Proper Scope of Government: Theory and an Application to Prisons」を分析の一つの大きなベースとしており(タイトルも同論文をもじっている)、政府が業務を企業に下請けに出すことの是非を刑務所の民営化を例にとって分析した元論文に対し、こちらは非営利団体に下請け対象を拡大し、医療を例にとって分析した格好になっている。
仮にこの論文の指摘するようなメリットが見直されて非営利団体への政府業務のアウトソーシングが進んだならば、国民経済計算における政府消費(cf. 関連論文)と対家計民間非営利団体(cf. 関連論文)の構成に影響が及ぶことになりそうである。