需給と金利の期間構造

というNBER論文が上がっているungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Supply and Demand and the Term Structure of Interest Rates」で、著者はRobin Greenwood(ハーバード大)、Samuel Hanson(同)、Dimitri Vayanos(LSE*1
以下はその要旨。

We survey the growing literature emphasizing the role that supply-and-demand forces play in shaping the term structure of interest rates. Our starting point is the Vayanos and Vila (2009, 2021) model of the term structure of default-free bond yields, which we present in both discrete and continuous time. The key friction in the model is that the bond market is partially segmented from other financial markets: the prices of short-rate and bond supply risk are set by specialized bond arbitrageurs who must absorb shocks to the supply and demand for bonds from other “preferred-habitat” agents. We discuss extensions of this model in the context of default-free bonds and other asset classes.
(拙訳)
我々は、金利の期間構造を形成する上で需給の力が演じる役割を強調する、拡大しつつある研究分野のサーベイを行った。我々の出発点は、デフォルトリスクのない債券利回りの期間構造のVayanos and Vila (2009, 2021) モデルで、同モデルを我々は離散時間ならびに連続時間で提示する。モデルの主な摩擦は、債券市場が他の金融市場から部分的に分断されている、ということである。短期金利と債券供給リスクの価格は、専門の債券裁定取引者によって設定される。裁定取引者は、他の「好みの生息地*2」にいる主体から、債券の需給へのショックを吸収しなくてはならない。我々は、デフォルトリスクのない債券や他の資産種別の文脈において、このモデルの拡張を論じる。

本文の説明によると、例えば「実際には効くが理論では効かない」とバーナンキが評した*3量的緩和QE)も、このような市場の分断で説明できるのではないか、との由。

*1:cf. 「短期金利政策と量的緩和政策のイールドカーブへの影響 - himaginary’s diary」では、同じ著者たちによる同様のテーマの論文(本論文でも参考文献に挙げられている)を紹介した。

*2:cf. Preferred Habitat Theory: What it is, How it Works

*3:cf. 量的緩和が効く理由 - himaginary’s diary