財政危機の予測:機械学習手法

というIMF論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Predicting Fiscal Crises: A Machine Learning Approach」で、著者はKlaus-Peter Hellwig。
以下はその要旨。

In this paper I assess the ability of econometric and machine learning techniques to predict fiscal crises out of sample. I show that the econometric approaches used in many policy applications cannot outperform a simple heuristic rule of thumb. Machine learning techniques (elastic net, random forest, gradient boosted trees) deliver significant improvements in accuracy. Performance of machine learning techniques improves further, particularly for developing countries, when I expand the set of potential predictors and make use of algorithmic selection techniques instead of relying on a small set of variables deemed important by the literature. There is considerable agreement across learning algorithms in the set of selected predictors: Results confirm the importance of external sector stock and flow variables found in the literature but also point to demographics and the quality of governance as important predictors of fiscal crises. Fiscal variables appear to have less predictive value, and public debt matters only to the extent that it is owed to external creditors.
(拙訳)
本稿では、計量経済と機械学習の技法が財政危機をアウトオブサンプルで予測する能力を評価する。政策適用の多くの機会で使われる計量経済手法は、ヒューリスティックな経験則を超えることができないことを示す。機械学習技法(エラスティックネット*1、ランダムフォレスト*2、勾配ブースティング決定木*3)は正確さを有意に改善する。従来の研究で重要とされてきた変数の小さな集合に頼らずに、予測変数候補の集合を拡張してアルゴリズムによる選択技法を利用すると、特に発展途上国について機械学習技法のパフォーマンスがさらに改善する。機械学習の各アルゴリズムが選択した予測変数の集合の間では、顕著な一致が見られる。得られた結果では、従来の研究で見い出された海外部門のストックとフローの変数の重要性を確認したが、人口動態と統治の質も財政危機の重要な予測変数であることが示された。財政変数の予測能力はそれよりも低く、公的債務は海外の債権者がどの程度保有しているかだけが重要であった。

財政危機は以下の4つの基準のいずれかが満たされた状況、と定義したとの由(連続した年は一つの事象と見做し、異なる事象間では危機の無い年が2年間あることを前提にしたとのこと)。その定義によると、1980-2016年の188か国について418の危機があったという。

  1. 信用イベント:官民の債権者に対するソブリン債債務不履行はすべてカウント。債務再編も同様。ただし、小さな技術的なデフォルトを除くためと、恒久的な危機が一連の新規事象に分類されるのを防ぐため、債務不履行額の規模と累計額に最小値を設けた。
  2. 極めて大規模な資金調達:この基準では、財政再建を目的とした、出資割当額の100%を超えるIMFの財政支援はすべて危機に分類される。EUの財政支援も同様。
  3. 暗黙的な国内の公的債務のデフォルト:以下の2種類のイベント。
    1. 高インフレ:閾値は、金融による財政赤字ファイナンスの程度に差があることを反映するため、所得グループに応じて変更
    2. 国内の累積延滞額:未払金を代理変数とした
  4. 市場からの信頼の喪失:数量と価格の両面を織り込むために、以下の2つの基準を設けた。
    1. 市場へのアクセスの喪失:債券発行が停止に追い込まれた
    2. ソブリンイールドの高騰