独立は破壊的イノベーションの解ではない

Joshua Gansが表題のエントリ(原題は「Independence is no disruption solution」)で、下記の自著を参照しつつ、破壊的イノベーションに直面した企業が独立ユニットを立ち上げて新たなビジネス空間でスタートアップ企業ならびに自社そのものと競争する、というクリステンセンの提案する解決法は上手く行かない可能性が高い、と書いている。その理由としてGansは、自社への競争圧力を高めることを企業は好まないこと、および、既存企業の社員にとって新環境への適応が難しいこと、という2点を指摘している。
まあそれはそうだろうな、という気もするが、Gansは最近の具体例としてフェイスブックによるインスタグラムとワッツアップの買収を挙げている。両社からの破壊的イノベーションの可能性に直面したフェイスブックは、二社を買収する道を選んだわけだが、完全に統合することはせずに、創立者やCEOをそのままにしてフェイスブック内の独立ユニットとして運営させる、という方策を取った。そのため、インフラを少し共有したことを除けば、フェイスブック本体と二社は無関係のままだった。その方策は特にインスタグラムで成功し、6年でユーザーは3000万から5億程度まで伸びた。また、共有インフラのお蔭で、モバイル広告によるマネタイズができたが、それはフェイスブックの傘下に入らなければ実現できなかった、とGansは言う。

The Disruption Dilemma (The MIT Press) (English Edition)

The Disruption Dilemma (The MIT Press) (English Edition)


しかしそのやり方は永続的なものではなかった。

As of today, the founders of Instagram and Whatsapp have left their companies and Facebook. Autonomy could only last so long and eventually those companies had to be brought into the Facebook masterplan. This was to be expected. Even companies that have tried their own independent business units (such as IBM) have had to bring them back inside in a painful integration. It is not clear how painful that integration will be in this case, but one thing for sure was that Facebook was not immune to the ‘more often than not’ phenomenon of acquired founders leaving some short time after acquisition. In this case, 6 years is surprisingly long.
(拙訳)
今日、インスタグラムとワッツアップの創設者は、自分の会社とフェイスブックを離れている。自立性が維持できるのはそこまでで、最終的には両社はフェイスブックの全体計画の中に組み込まれざるを得ない。それは予想されたことである。(IBMのように)自身の独立ビジネスユニットを試してみた企業でさえ、苦痛に満ちた統合によって、それらを社内に戻さざるを得なかった。今回の場合、その統合がどれほど苦痛に満ちたものになるかは不明だが、一つ確かなことは、フェイスブックもまた、買収先の創立者が買収後まもなく去る、という「大抵そうなる」現象とは無縁ではなかった、ということである。このケースでは、6年は驚くほど長かった、と言える。

Gansは、これはフェイスブックにとっての成長痛のようなものではないか、という趣旨のことを述べている*1

*1:正確には、自分たちならば違ったやり方でできると信じていたスタートアップ局面を抜け出し、変えるのは難しいこともあるのだ、ということを学んだ、と書いている。