自殺の5人に1人は失業関連

という記事がEurekalertに上がっているチューリッヒ大学精神病院のCarlos Nordt、Ingeborg Warnke、Erich Seifritz、Wolfram KawohlによるThe Lancet Psychiatryオンライン版掲載論文「Modelling suicide and unemployment: a longitudinal analysis covering 63 countries, 2000–11」の紹介記事で、概ね以下のようなことが述べられている。

  • 世界では毎年およそ百万人が自殺するが、そのうち何人が失業関連かを見い出すため、2000年から2011年の63ヶ国のデータを、北米と南米、北欧と西欧、南欧と東欧、欧米以外の4つの地域に分けて分析した(中国とインドのデータは入手できなかった)。
  • 各国固有の要因はあるが、4地域すべてで失業と自殺率に強い関連性が同様に見られた。また、失業率の変化は、性別や年齢に関係なく同等の影響を及ぼした。
  • 毎年、5人に1人の自殺が失業と関連していた。2008年の危機後、自殺者は短期的に5000人増加した。その数値は既にこれまでの研究で知られていたが、今回の研究で初めて明らかになったのは、その年の失業関連の自殺者が約46,000人であったこと。従って、失業関連の自殺者の総計は、直近の経済危機による増加分の9倍に達していたことになる。
  • 危機前の失業率が高かった国より低かった国の方が、失業率の変化が自殺に与える影響は大きかった。従って、失業率の低い国でも、人々と労働市場のつながりを保ち、健全な労働環境を促進するための投資は重要。
  • 自殺率の増加は失業率におよそ6ヶ月先行する。労働市場の先行きが予期され、経済状況の展開に関する不確実性が早くもマイナスの影響を及ぼしていることになる。そのため、厳しいリストラといった職場でのプレッシャーの高まりが自殺を促す。職場内外の自殺リスクの増加を認識し、それにより効果的に対処するため、人事部門などでの専門家の育成が必要。
  • 精神面で脆い人は自殺の危険性がより高いが、今回の分析ではデータの不足によりそうした要因を含めることはできなかった。
  • 失業による問題の影響が及ぶのは直接の当事者だけではない。研究結果によれば、その多くが労働市場から退いているであろう65歳以上も影響を受ける。