FRBが直面する5つのシナリオ

についてTim Duyがブルームバーグ論説に書いている(H/T Economist's View)。
Duyは記事前半において各連銀総裁の見解を紹介した上で、以下の5つのシナリオを提示している。

  1. 経済は不況に陥り、12月の利上げは、中銀がゼロ金利からの脱却を試みて失敗した過去の数多の事例に付け加わることになる。
  2. 金融市場は落ち着きを取り戻し、経済は減速して持続可能な成長軌道に乗るため、失業率が安定する一方でインフレは引き続き緩やかに推移する。このため、FRBの利上げは、年後半の1,2回程度にとどまる。
  3. 金融市場は落ち着きを取り戻し、経済は失業率をさらに押し下げるだけの活況を維持する一方でインフレは緩やかに推移する。これは、今年25ベーシスポイントの利上げを4回行うFRBのベースラインシナリオに近いケース。
  4. 金融市場は落ち着きを取り戻し、経済は失業率をさらに押し下げるだけの活況を維持し、インフレは加速し始める。これにより、FRBは今年100ベーシスポイント以上の利上げを実施する必要に迫られる。
  5. 今年前半は金融市場が荒れ、労働市場は堅調であるもののFRBは「リスクマネージメント」モードに入ることを余儀なくさせられる。3月と4月の会合では利上げは見送られる。FRBが利上げを遅らせたことは市場を落ち着かせ経済活動の減速を防ぐが、その遅れを取り戻そうとして年後半には急速な利上げを行う。

金融市場の参加者は現時点でシナリオ1と2の中間を考えている、というのがDuyの見立てである。
しかし、(現時点ではシナリオ1,2と区別できない)シナリオ5も真剣に考慮する必要がある、とDuyは言う。これはアジア危機時のFRBの行動に合致している、とDuyは指摘する。
当時の米国経済も、現在と同様に、海外景気の減速と資本流入によるドル高というリスクに直面していた。利上げを遅らせることしかできない現在とは違って、当時のFRBは利下げが可能だったが、外部要因による危機が去った後は政策転換を行う必要に迫られた。このシナリオでは、急速な利上げという本来はFRBがやりたくない政策行動を余儀なくさせられる、とDuyは指摘している。