最低賃金引き上げが失業につながらない7つの理由

引き続き最低賃金に関するエントリ。
John Schmittの最低賃金に関するサーベイ論文をWonkblogが要約し最低賃金が雇用にあまり影響をもたらさない理由の候補を7つ挙げている(H/T Rortybomb):

  1. 雇用者は、最低賃金引き上げに対応して労働者を減らす代わりに、医療補助や労働時間や訓練を削減することができる
    • ただし、その点を明確に示した実証研究は存在しない。
  2. 雇用者は、高賃金労働者の賃金をカットすることによって最低賃金引き上げに対応できる
    • ある論文によると、最低賃金引き上げに直面した雇用者の半数は、熟練労働者の昇給やボーナスを遅らせたり減らしたりしたという。
    • 低賃金労働者の方が消費性向が高ければ、GDPを押し上げる可能性もある*1
  3. 企業は商品の価格引き上げでコストを転嫁できる
  4. 企業は利益の減少を甘んじて受け入れることができる
    • この点を明確に示した研究は存在しない。
  5. 企業は効率性を高めることによって対応できる
  6. 労働者自身がもっと働くようになる可能性もある
    • 収入が増えると労働者がもっと仕事熱心になり生産的になるという点についての理論的論文は数多ある。ただし実証研究は余り無い。
  7. 最低賃金引き上げによって人の入れ替わりが減り、審査や訓練や欠員によるコストが減少し、企業がむしろ得をする可能性もある

*1:cf. 17-18日エントリで紹介したリー=サエズ論文。