ビッグマックを買うにはマクドナルドで何分働けば良いか?

昨年アメリカ経済学会会長を務めたオーリー・アッシェンフェルター(Orley Ashenfelter)*1が、今年初めの(おそらくシムズに交替する前の最後の)会長演説で、ビッグマックを用いた賃金の国際比較方法を発表したらしい(ジョン・テイラー経由)。


テイラーブログからリンクしている論文*2は会員しか読めないが、ぐぐってみると、例えばThe AtlanticGlobalPostの記事で概要が紹介されているほか、こちらではアッシェンフェルターがLSE講演時に使用したと思しきスライドが見られる。


ビッグマックと言えばエコノミスト誌のビッグマック指数が有名であるが、ここではその考え方を一歩進めて、マクドナルドで一時間働いたらビッグマックを何個買えるか、という個数を示すBMPH(Big Macs Per Hour Of Work)なる指標を開発したとの由*3


以下はスライドに掲載されていた2007年時点の指標値。

国・地域 マック賃金 マック賃金比率 ビッグマック価格 BMPH
U.S. 7.33 1 3.04 2.41
Canada 6.8 0.93 3.1 2.19
Russia 2.34 0.32 1.96 1.19
South Africa 1.69 0.23 2.08 0.81
China 0.81 0.11 1.42 0.57
India 0.46 0.06 1.29 0.35
Japan 7.37 1.01 2.39 3.09
U.K. 10.53 1.44 3.92 2.69
The rest of Asia* 1.02 0.14 1.95 0.53
Eastern Europe* 1.81 0.25 2.26 0.8
Western Europe* 9.44 1.29 4.23 2.23
Middle East* 0.98 0.13 2.49 0.39
Latin America* 1.06 0.14 3.05 0.35

ここでマック賃金(McWage)は購買力平価換算のドル建てのマクドナルドの時給、マック賃金比率(McWage Ratio)はそれを米国を1として基準化したもの、BMPHはマック賃金をビッグマック価格で割ったもののようだ。この表の対象国・地域では、日本のBMPHが3.09と最も高く、インドと南米のBMPHが0.35と最も低い。総じて言えば、バラッサ=サミュエルソン効果を良く表わす結果になっている。


なお、スライドの以下の図を見る限り、日本のBMPHが高いのは賃金が高いためというよりは、ビックマックが安過ぎるためのようである。


ただ、2007-2011年に掛けてビッグマックの価格が倍になったため(半額セールの終了?)、その状況も解消したようである(賃金も[購買力平価でも円高が進展しているせいか]1.5倍近くに上昇しており、結果としてBMPHは3割ほど下がっている)。

*1:「アッシェンフェルターのワイン方程式」なるもので有名らしい

*2:NBERサイトにもおそらく同じ論文が上がっている

*3:その逆数を取って60を掛ければ、ビッグマックを1個買うのに働くべき分数が求められることになる。