アメリカ独立戦争の経済的影響

についてPeter H. LindertとJeffrey G. Williamsonという2人の研究者が論文を書き、その内容をvoxeuで紹介しているMostly Economics経由)。


voxeuでは、1840年価格による個人所得という形で実際の値が示されている。それをグラフ化してみると以下のようになる。


また、同時に示されている期間別の年成長率をグラフ化してみると以下のようになる。

これを見ると、1774年時点では南部は北部の倍近い所得を誇っていたが、独立戦争後の期間(1774-1800)にその南部で特に落ち込みが見られ、1800年以降も他の2つの地域に比べて回復がはかばかしくなかったことが分かる。
ただ、それでも1800-1840年の全国ベースの成長率は1.26%に達し、クズネッツのいわゆる近代成長の基準値である1%をクリアしている。一方、同時期(1801-1831)の英国の成長率は0.45%に過ぎなかった。


記事では、いわゆる南部のプア・ホワイトが現われたのは、こうした独立戦争後の低迷を経た19世紀以降のことである、と述べている。そしてその低迷の原因は分からない、としながらも、商品輸出への打撃、制度的失敗、戦争被害の3つを可能性として挙げている。


実際、独立戦争には3つのマイナスの影響があったという。

  • 戦争自体によるインフレや機能不全といった経済的被害
  • 貿易の落ち込み(1793年以降はナポレオン戦争の影響も)
    • 特に南部では商品輸出が半分近く低下
    • ただし所得に占める輸出の割合は1770年代初頭で6-7%に過ぎなかった(南部ではもっと高めだったが)ので、独立戦争後の落ち込みがすべて「輸出主導型」だったとは考えられない
  • 戦争による都市の破壊と人材の流出


また記事では、独立戦争前の米国は平等度が高かったことを示している。ジニ係数で見ると、奴隷を含めても0.46であり、当時の英国やオランダより低いのみならず、今日の米国の0.5よりも低い、という。