格差が金融危機の原因となった、というのは、ここで紹介したようにラジャンが主張し、かつ、各所から反論がなされているところであるが、その反論にMichael Bordoが加わった。
以下はBordoとChristopher M. Meissnerのvoxeu記事で提示された図。
上図は、14カ国における上位1%への所得シェアの変化を横軸、信用供与の変化を縦軸に取ったグラフで、両者がほぼ無相関であることを示している*1。
下図は、比較のため横軸を実質GDPの変化に置き換えたもので、上図よりは強い相関を示している。
また、同記事で彼らは、各国の歴史的なエピソードも幾つか取り上げ、やはり格差と金融危機の因果関係が見られないことを指摘している。具体的には:
- 1920年代の米国では、確かに所得の上位1%への集中度と、消費者や不動産の信用が並行して上昇した。しかし消費者向け信用の上昇は、自動車や洗濯機やラジオといった新たな高額の耐久消費財が現われたためであり、供給側の技術革新が原因であった。また、不動産ブームは大恐慌のかなり前(1926年)に終わっており、戦後の繰延需要、住宅の品質向上、有利な金利環境がその原因であった。
- 1980年代の日本では、信用供与の上昇が所得の集中度の上昇に先行した。また1995年以降に所得の集中度が上昇し始めたが、信用供与の伸びはむしろ低迷した。
- 1970年代のオーストラリアでは、信用供与は所得の集中度と無相関であった。1980年代後半の不動産ブーム期には、信用供与の上昇が所得の集中度の上昇に先行した。